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「焼き芋売り」を見ませんか?

スーパーに押されて、失われる冬の風物詩
「焼き芋売り」を見ませんか?

冬の風物詩

 自宅近くのスーパー店頭の焼き芋が人気だ。「蜜芋」に分類される糖度が高くて大きな品種。機械でじっくり焼き上げるので石焼きに劣らぬ甘みが出る。前を通るたびに気にしているが、売り切れていることが珍しくない

 似たような焼きたての芋を、別の店やコンビニエンスストアなどでも扱っている。そのせいだろうか。東京都心でリヤカーや軽トラックの焼き芋売りをめっきり見なくなった。重さあたりの価格がスーパーの倍以上するのが普通だから、仕方ないのかもしれない

 今でも観光地の土産物などでよく見かける『親父(おやじ)の小言』の中に印象的な言葉がある。「小商いもの値切るな」。版によっては「いじめるな」とも言う。生業的で立場の弱い小さな店や行商人の品は、そのまま買ってやれという教えだ

 下請け中小企業では、購買側企業の「優越的地位の乱用」が法で規制される。消費者は買い手であっても規制を受けない。合理的な消費行動は当然だし、それによって淘汰(とうた)される業者もあるだろう

 焼き芋売りを値切ったりいじめたりした覚えはない。けれど、熱々の芋を黒ずんだ軍手で新聞紙にくるんでくれたおじさんの姿を見なくなったことが妙に気にかかる。冬の風物詩が失われゆくことへの感傷だけが理由だろうか。
日刊工業新聞2015年1月27日 産業春秋
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
今冬も大人気のようです。イモはじっくり焼き上げると甘みが増します。そんな店をみつけましょう。

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