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今夏一般公開、明治の異人さんが愛した奥日光の別荘

アーネスト・サトウは「母国の湖水地方を思い起こさせる」と語った
今夏一般公開、明治の異人さんが愛した奥日光の別荘

完成後の旧英国大使館別荘の外観イメージ(栃木県ウェブサイトから)

 英国と言えば黒のイメージがある。ロンドンの黒タクシー、ギネスビール―。栃木・奥日光で再建された旧英国大使館別荘は、ヒノキを使った黒の外装が美しい

 2016年夏の一般公開に先だって、栃木県が主催する視察ツアーに加わった。中禅寺湖畔にあり、2階から一望する水辺に心洗われる。夕日のぬくもりには、明治の文化人を想像した

 「この地は母国の湖水地方を思い起こさせる」と語ったとされる英国外交官、アーネスト・サトウが約120年前に自らの山荘として建設した。その後、英国政府が2008年まで使用。10年に無償譲渡をうけた栃木県は、解体調査から復元まで4億円超を投じた

 建物に県産材を使う一方、内装の壁紙には英国ゆかりのウィリアム・モリスの植物柄を施した。2階には紅茶を楽しめる「英国文化交流室」を設け、自然散策ツアーなども企画する

 栃木県を訪れた観光客は14年に8711万5000人。そのうち宿泊客は1割弱の787万5000人だった。3年連続で増えたものの、日光に泊まる客は東日本大震災以前の8割程度。サトウらが愛した国際的避暑地・日光の復活はなるか。瀟洒(しょうしゃ)な和洋折衷の別荘が、その一助になってもらいたい。
(日刊工業新聞社2015年12月22日 産業春秋)
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
軽井沢が外国人の避暑地として開発されたことは知られていますが、日光にもこんな歴史があったんですね。

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