【COP21を振り返る】♯3 シンクタンクもパリ協定を評価

京都レジームから脱却。一方で目標とのギャップはイノベーションで埋めるしかない

 COP21を訪れたシンクタンクも報告会を開いてパリ協定への評価や現地の様子を語り始めています。  国際環境経済研究所は12月18日、メディア向け報告会を開きました。同研究所はまず、すべての国が参加する法的拘束力のある枠組みが構築されたことを「京都議定書レジームから脱却」と評価。    日本政府が推進する二国間クレジット制度(JCM)が新枠組みに採用されるかどうかもCOP21の焦点でした。同研究所の竹内純子主席研究員は「パリ協定には協力的アプローチ(市場メカニズム)という表現で生き残った印象」と表現。各国の排出量取引制度を連携させる案など一部の国・地域が主張した案も残しつつ、今後のCOPで議論を継続することになりました。  JCMは日本の低炭素技術によって途上国のCO2排出量を削減に貢献し、減った排出量の一部を日本国の削減量に加える仕組みです。日本政府は技術輸出を進めるツールと考えていますが、パリ協定後の戦略が不透明です。  パリ協定で途上国も削減目標を持ったためです。自国の削減目標達成が優先されるので、日本に削減量の一部を渡すとは思いにくく、JCMの魅力が薄れのではと心配されます。  この点について手塚宏之主席研究員は「大規模なJCMをどうするのか、日本は研究しておく必要がある」とコメントしました。高効率な火力プラントなど、削減量が数万トン規模になる大プロジェクトであるほど、相手国は削減量を日本に渡したくないはずです。  同研究所は、パリ協定の技術に関する条文でイノベーションの重要性に言及があったことも評価。竹内研究員は「京都議定書の最大の欠陥は交渉で減らそうとしたことだった」と切り捨てました。  そして有馬純・主席研究員は「(気温上昇を2度未満、努力して1・5度C以内に抑える)目標は非現実的。各国の野心レベルは上げられない(目標数値アップは無理)。温度目標とのギャップはイノベーションで埋めるしかない」と語りました。    COP21会場で開いた各国の産業界との意見交換の模様も紹介しました。米国の産業界は「米国の目標の内訳はブラックボックスの中」と語ったそうです。オバマ大統領がCOP21成功の立役者の一人ですが、足元の国内対策は未知数のようです。  インドの産業界は「主要工業国で石炭を使っていない国はあるのか」「成長には石炭が不可欠」「石炭を効率良く使えと言え」と主張を繰り返していたと言います。  インドはエネルギー不足解消のために石炭火力を増設中。世界3位のCO2排出量のさらなる増加が懸念されています。COP21開幕前、英国が石炭火力全廃を目指すと表明し、OECDも石炭火力への融資を控えるなどの報道がありました。本番でも石炭火力抑制が議論されると思われましたが、パリ協定では石炭火力を制約するような文言は盛り込まれませんでした。  地球環境戦略研究機関(IGES)は25日に報告会を開催しました。浜中裕徳理事長は「ユニバーサルで意欲的な合意。国際社会は京都以来の重要なステップを踏み出す。化石資源に依存しない世界にしていくシグナルを出せたのが最大の成果」とパリ協定を賞賛しました。    IGESの報告会では排出量取引、炭素税など、CO2に価格を付けて排出を抑制するカーボンプライシング(炭素価格制度)に言及する場面が多かった印象です。田村堅太郎IGES関西研究センター副所長は「個人的には日本は遅れていると思う」と分析しました。  国内政策については「民間企業が中長期的に低炭素事業に安心して投資できる環境整備」と訴えました。太陽光、水素など黒字化までの時間がかかる低炭素技術があります。途中で政策転換があると、研究開発中の企業には痛手です。

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