ファシリテーターが選ぶ「2015年この3本」#8 産業界に吹き荒れた人手不足の嵐

 「どう働くか」は「どう生きるか」と同義。働き方をめぐる問題は、それぞれの価値観や人生観にもつながる身近かつ、大きなテーマです。自分自身を多少なりとも投影しながら、来年もさまざまなニュースを取り上げていきたいと思っています。   今年はさまざまな業界で、人手不足の問題が顕在化したことが印象的です。アベノミクスは国内に景気回復をもたらした一方で、日本が抱える深刻な労働力不足の現実を浮き彫りにしました。  日本経済が長期デフレに苦しんだ「失われた20年」は、労働力人口が減少の一途をたどることが分かっていながらも、人材余剰からこの問題から目を背けることができたのかもしれませんが、これからはそうはいきません。  気になるのは大手企業の新卒採用の日程が毎年のように変更されることと、産業界に賃上げ要請を繰り返す政府の異例の介入。人材の獲得に腐心する中小企業にこれ以上のしわ寄せが及ばないことを願います。 ●中小企業の人手不足がより深刻に。日銀短観、92年5月以来の「需要超過」水準  2015年を振り返ると、年明け最初のインタビューを行ったのは、経営共創基盤CEOの冨山和彦さんでした。カネボウをはじめ数多くの企業再生支援を手がけてきたことでもご存知の方も多い冨山さんですが、この日の取材では最低賃金の引き上げの重要性を強調していました。  理由は「デフレ、人余りの時代には労働生産性の低い産業が雇用の受け皿として一定の役割を果たしてきたが、これからは、ブラック企業には円滑に退出してもらい、イノベーションと集約化を進める方向に政策の舵を切る」必要があるため。「最低賃金を引き上げることで、事業が継続できなくなれば、おのずと優良企業への労働移動が促される」と強調していました。そして現在。安倍首相は最低賃金の引き上げに意欲を示しています。 ●経団連会長の「言質」とった安倍首相   賃金や設備投資といった民間が決めるはずの事柄に政府が繰り返し介入した2015年を象徴する記事。業績好調な大手企業に「内部留保を吐き出せ」とプレッシャーをかけるのはともかくとして、厳しい収益下でも人材を確保するための待遇改善に踏み切らざるを得ない中小企業は様相が異なります。来年も再び「官製春闘」がやって来ます。 ●深刻化する自動車整備士不足  人手不足が深刻化する一例としてピックアップした記事ですが、予想以上にアクセスが多かったことに正直、驚きました。企業競争力の源泉が揺らぐことへの危機感や、これを克服する具体的な取り組みに関心を持ってもらえたのかと思っています。

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