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スポーツ選手は「歯が命」だからマウスガードを!

普及拡大へ滋賀県内の歯科医院などが連携組織
スポーツ選手は「歯が命」だからマウスガードを!

接触プレーが多いラグビーでマウスガードは欠かせない(スポーツサイエンスデンタルグループ提供)

 今年のトピックスの一つが「ラグビーワールドカップ(W杯)2015」で日本が優勝経験のある強豪、南アフリカを撃破したことだろう。キックで活躍した五郎丸歩選手はもちろん、ラグビー選手に欠かせない装備となっている「アイテム」がマウスガードだ。その着用啓発などを目的に、滋賀県内の歯科医院らで構成する組織が発足した。

 15年、滋賀県内の11の歯科医院やクリニックなどが加盟するスポーツサイエンスデンタルグループ(滋賀県草津市、077・563・2037)が発足した。歯科技工などを手がけるエムズトライデント(同)の松本卓也社長が事務局となり、同グループの窓口を担い、マウスガードの使用啓発や正しい使い方を発信する。

 マウスガードは文字通り口内で歯とかみ合わせるように装着して歯を守る。マウスピースやマウスプロテクターと呼ばれることがあるが、同グループでは日本スポーツ歯科医学会の呼称統一もあり「マウスガード」として普及拡大に努める。

 「スポーツ選手にとって歯は大事」。こう強調するのは大阪大学歯学部付属病院長の前田芳信教授だ。歯を外傷から守るためにマウスガードの着用を推奨する前田教授は「ケガを恐れていては十分なパフォーマンスを発揮できない。こうした予防にマウスガードが有効となる」と話す。

 アメリカンフットボールやボクシングなどでは義務化される。着用率の高いラグビーに加え、「最近はサッカーやバスケットボールでも増えてきた」と、コンタクトを伴うスポーツでは着用率が高まりつつある。

 それでも若年層からの装着を含めて、各種スポーツでの装着率はまだ低いのが課題だ。前田教授は「小中学校に提供できるように、文部科学省に働きかける必要があるだろう」と話す。

 滋賀県内でマウスガードを扱う歯科医の一人は「マウスガードをつくる基準が歯科医にとっても明確化されていない」と指摘する。前田教授は「学会でもかみ合わせの取り方を統一しようという動きが出始めている。将来は日本の技術力をもってすると、衝撃吸収性の高い薄い膜のようなものをマウスガードとして装着する時代が来るかもしれない」と見通す。

 スポーツサイエンスデンタルグループ事務局の松本氏は「マウスガードの普及が停滞しているのは、価格帯の振れ幅が大きいのがネック」と話す。同グループに参画する歯科医院は2万円程度で販売されるマウスガードもある中、2900円の統一価格で請け負う。

 松本氏は「良い製品を安く提供できるように、マウスガード普及で社会貢献することに賛同してもらえる歯科医院を募りたい」と力を込める。「赤字覚悟、もうけ度外視」を乗り越えて歯科医の琴線に触れられるか―。啓発活動に力を入れつつ、今後は滋賀県内だけにとどまらず、全国的なグループへ規模拡大を目指す考えだ。

(文=林武志)
日刊工業新聞2015年12月24日 ヘルスケア面
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
消費税込みでも3000円ちょっとという金額は、確かに魅力的。あとは「息が苦しそう」「話しづらそう」といった先入観を払拭できるかが普及のカギとなりそうです。

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