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グーグルとフォードが自動運転車の委託製造で交渉、オートモーティブ・ニュースなど

1月にラスベガス開催のCESで発表、両社で共同出資会社を設立か 
グーグルとフォードが自動運転車の委託製造で交渉、オートモーティブ・ニュースなど

グーグルが開発した次世代自動運転車(同社のウェブサイトから)

 米フォード・モーターが、グーグルの次世代自動運転車の受託製造をめぐってグーグルと協議中だと米自動車専門誌オートモーティブ・ニュースが22日に報道した。事情に詳しい関係者によれば、協議内容の詳細は明らかではないが、両社の話し合いは長く続いているとされる。最終的に交渉がまとまれば、ラスベガスで1月初旬に開かれる世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」で、フォードのマーク・フィールズCEOらが出席した記者会見を1月5日に開く予定だという。

 一方、ヤフー・オートによれば、交通事故などが起こった場合に備えてフォードの法的責任を明確にするため、両社でグーグルの技術をもとにした自動運転車を製造する共同出資会社を設立するという。さらに、この契約は非独占であり、グーグルはほかの複数の自動車メーカーとも、同様の話し合いを続けているとしている。
 
 こうした内容について、グーグルの広報担当者は「憶測にはコメントしない」と回答したが、グーグル幹部は複数の自動車メーカーと話し合いを進めていることを認めた。また、フォードの広報担当は「我々は世界中のハイテク企業と協業している。競争上の理由からこのような議論は非公開を守り、憶測にはコメントしない」とし、報道内容について否定も肯定もしなかった。

 グーグルとフォードは2011年にドライバーの運転の癖を学びながら、目的地に効率的に到着できるようにする技術開発で提携。自動運転車についても3年前の2012年から協議を続けていると言われている。グーグルは、自社開発した卵型の次世代自動運転車の初期モデル100台をデトロイトのラウシュ・インダストリーズに生産委託しているが、実はラウシュはフォードと緊密な関係にある。

 さらに、グーグルとフォードは人的なつながりも深い。フォードのアラン・ムラーリー前CEOは現在、グーグルの取締役。7月にはフォードの製品開発部門に14年間在籍し、「エクスペディション」SUVのチーフエンジニアを務めたジョン・クラフシック氏がグーグルの自動運転車プロジェクトのCEOに就任した。クラフシック氏は韓国・現代自動車の元米国子会社社長で、その後、自動車ネット通販であるトゥルーカーのCEOを務めている。

 グーグルとの提携は、フォードが今年1月から掲げている「フォード・スマート・モビリティー」という新事業戦略とも方向性が合致する。同社はシリコンバレーのパロアルトに研究施設を持ち、「フュージョンハイブリッド」ベースの自動運転車について、2016年にカリフォルニア州で公道走行試験を開始すると今週発表。これとは別に、フォード幹部は完全自動運転車についても「4年以内に準備が整えられると思う」と話している。

 フィールズCEOは12月11日のインタビューで、「我々はすべてを自分たちでできるほど傲慢ではない。パートナーシップが非常に重要だ」とした上で、「自社で自動運転のソフトウエアを開発しているが、それはほかの企業と協力しないということではない。それがここ(パロアルト)にいることの長所だと思っている」と、グーグルを含めた他社との協業について思わせぶりな発言をしている。

 一方、既存の自動車メーカーとの提携は、グーグルのように自動運転車を開発するハイテク企業にとっても都合がいい。ゼロから製造工場を立ち上げるのには数年という期間と、莫大な資金が必要になるためだ。駆動系のパワートレーンや安全性、環境対応についても、自動車メーカーが長年培ってきた専門技術とノウハウを反映させることができる。

 グーグルは自動運転車の商品化だけでなく、自社でのサービス展開も視野に入れている。今月17日にはブルームバーグが、グーグルの持ち株会社であるアルファベットの下に、2016年をめどに自動運転ビジネスを行う独立事業部門の設置を検討していると報じた。配車サービスで急成長を遂げ、自動運転車も開発中といわれるウーバーなどと競合する形で、グーグルも近い将来、都市部中心にタクシーやカーシェアリングによる自動運転サービスを展開するとみられている。
ニュースイッチオリジナル
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
グーグルがアルファベット傘下に事業会社を新設し、自動運転車でのサービス事業を検討しているとブルームバーグに報じられてすぐ、カリフォルニア州の運輸当局(DMV)が自動運転車についてのガイドラインのたたき台を発表。それによれば、自動運転車はハンドルやブレーキペダルが必要で、当局に承認された自動運転免許を持つ操作者が同乗することとあり、これに対して、ハンドルもペダルもない完全無人運転車を目指すグーグルが猛反発。「自動運転で先進技術の実用化を目指す企業が、カリフォルニアからほかの州に流出することになってしまう」と反論した。一方、フォードの本社のあるミシガン州も自動運転車関連の集積に力を入れているが、カリフォルニア州の珍しく保守的な姿勢が、もしかするとフォードなどを利することになるかもしれない。

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