【COP21閉幕】パリ協定にみる企業のチャンスとリスク

196カ国・地域が低炭素技術のマーケット

*COP21「パリ協定」採択−世界で地球温暖化対策に挑む (日刊工業新聞2015年12月15日深層断面より一部抜粋)  COP21が終わり、巨大な低炭素市場が出現する。パリ協定に196カ国・地域が参加するからだ。削減義務はないが国際公約であり、どの国も目標達成に向けた対策を始める。日本企業には低炭素技術を売り込むマーケットが196カ国・地域に広がった。  COP21では支援を求める途上国と先進国との間で緊迫した議論が続いた。支援を求めるということは低炭素化技術を必要とする証拠である。途上国のニーズに応える提案ができれば巨大市場を取り込める。パナソニック環境・品質渉外室の名倉誠室長は「ニーズに応える技術の提供で強みを発揮できるチャンスだ」と語る。家庭や工場のエネルギー管理システム、水素関連技術も途上国に売り込める機会がある。「街単位や工場全体といった大きなくくりで低炭素化に貢献する」と意気込む。  すでにニーズにつかんだビジネスが始動している。今夏までにベトナムの2カ所の病院に日本製のインバーター付きルームエアコンが500台ずつ、合計1000台が導入された。モーターの回転数を調整できるインバーターは空調のエネルギー消費を絞り込めるため、病院全体を35%省エネ化できる見込みだ。インバーターエアコンは世界的にみて日本メーカーの独壇場となっている。  この事業は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が取り組んでいる。ベトナムは30年までに自助努力で8%削減、国際社会からの支援があれば25%減に引き上げる条件付き目標を掲げる。  日本ではルームエアコンは家庭用だが、同国ではビルにも使われている。目標達成のために更新需要が生まれると、日本企業にチャンスだ。  三菱電機システムサービス(東京都世田谷区)の工場向けエネルギー監視制御システムは海外からの引き合いが増えている。中国にも50件が導入され部品加工や食品工場で使われている。エネルギー使用量を予測する機能があり、使いすぎが見込まれると生産に影響のない設備を自動停止して省エネ化する。同社の伴啓一営業企画グループ担当部長は「人手をかけずエネルギー管理ができるので海外で受け入れられている」とニーズをつかんだ理由を話す。三菱電機の南原智彦環境推進本部長は「確実に省エネ対策を打てる」と太鼓判を押し、途上国での需要拡大を見込む。  キヤノンの古田清人・環境統括センター所長が「パリ協定をきっかけに、ぜひ海外に広げたい」と語るのが「CO2(二酸化炭素)ゼロ複合機」だ。同社は、オフィス複合機の利用で発生するCO2を実質ゼロにする仕組みを16年1月から全機種に拡大する。  他の場所で削減したCO2を購入し、利用で発生するCO2を打ち消す経済産業省の「カーボンオフセット」制度を活用した。今は国内だけだが「CO2の削減余地が大きい活動に資金が回るようになっている。この仕組みも一緒に輸出し、途上国の削減に貢献したい」(古田所長)という。  国際エネルギー機関は、すべての国の目標達成にはエネルギー分野だけで13兆5000億ドル(1620兆円)の追加投資が必要と試算する。日本政府は低炭素技術で国際貢献すると言い続けてきた。パリ協定が採択され、大きな貢献ができる機会が訪れた。 (日刊工業新聞2015年12月15日 総合4/国際)  気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は日本時間13日未明に「パリ協定」を採択し、閉幕した。支援を求める途上国と先進国との緊迫した攻防が最後まで続いた。  薄氷を踏みながらもたどり着いた新協定は、京都議定書にかわる新たな国際枠組みだ。196カ国・地域の全加盟国が参加し、産業革命前に比べ気温上昇を2度Cよりも低く抑える目標を掲げた。1・5度C未満という努力目標も加えた。年1000億ドルを下限とする途上国への資金援助は、法的拘束力を持たない形で決着した。  国別の目標達成の義務化は見送ったものの、途上国と先進国が同じ枠組みに参加し、長期目標を共有したことは大きな成果だ。これを社会や経済構造を変える歴史的転換点にしたい。企業はパリ協定が動きだす2020年以降の変革を予想し、自社の事業への影響を検討しておくべきだろう。  パリ協定では、各国に温室効果ガス排出削減の国内対策の実施を義務づけている。世界中のどこの国で事業をする場合でも、この問題と向き合うことになる。  例えば中国は17年から排出量取引制度を全国規模に拡大する。2省5市で試行中だが、すでに世界最大の排出量取引市場を形成している。他の国でも今後、排出量取引や炭素税を導入するケースが増えるだろう。企業としては、事業展開する国・地域の政策を注視しなければならない。  また地域性だけでなく、今後のトレンドの変化も企業行動を左右する。パリ協定では目標の引き上げを前提に、5年ごとに進捗(しんちょく)を検証する制度を導入するとした。各国が将来、目標を上方修正する可能性を見込まなければならない。目先だけではなく、厳しい目標に備えた長期計画が必要だ。  ただ排出削減はエネルギー消費を抑え、コスト削減にもつながる。先手を打った企業ほど、自らの体質を強固にするだろう。    ここ数年、日本の温暖化対策は停滞していた。パリ協定をきっかけに再び取り組みを加速し、世界的に厳しさを増す温暖化対策に備えてもらいたい。

続きを読む

特集