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神奈川のベネクス、世界で「休養市場」の創出に挑む

疲労回復衣類で初めての海外展開。欧州で生産を開始
神奈川のベネクス、世界で「休養市場」の創出に挑む

ベネクスはドイツとリトアニアに生産拠点を設置。欧州専用の「疲労回復ウエア」を生産している

 ベネクス(神奈川県厚木市、中村太一社長、046・280・4117)は、11月から休養や疲労回復を目的とした衣類「リカバリーウエア」の生産・販売をドイツで開始した。海外展開に伴い、欧州専用デザインや物流システムもゼロから作り上げた。初年度は1億円の売上高を目指し、3年後には3億円に引き上げる計画だ。“世界のリカバリー市場の創造”と“人々を元気にする”という企業理念の下、初の海外展開を進める。

 ベネクスのリカバリーウエアは、神奈川県や東海大学などと共同開発した休養時専用のウエア。ナノプラチナなどの鉱物を練り込んだ特殊新素材繊維を使い疲労回復へと導く。

 2013年にドイツ国内で開かれたスポーツ用品の展示会「イスポ(ISPO)」に出展したことを皮切りに欧州進出を加速。14年にドイツのミュンヘン市内に現地法人を開設、同国内のスポーツ用品を扱う約140店舗で販売を始めた。

 14年年末から15年1月にかけては、生地づくり工場と縫製工場を同国トロッシンゲンとリトアニアのカウナスにそれぞれ設置し、試作品作りを進めていった。

 欧州には日本から特許取得済みの糸を輸出するが、欧州製の特徴と日本製のそれは違う。現地に、工場で糸を編んで生地にする機械や染色機械のほか縫製、検品まで一貫生産できる設備・体制を整えた。ベネクスの片野秀樹専務は「郷に入れば郷に従え、だ。デザイナーや生地の質感も違う」と説明する。

 受注・出荷・在庫管理のシステムもDHLとともにドイツ国内で新たに作り上げた。基本はDHLの管理する倉庫でピッキングや包装をした後、配送する仕組み。製品のバーコードを受注ごとにプリントアウト・貼付することで、バーゲンセールの実施時などの価格変更を容易に行えるようにした。BツーB、BツーCともにネットにより受注・管理する。

 欧州ではスポーツ、フィットネス、ウェルネスの三つの市場を狙う。「日本は休養にネガティブな発想があるが、欧州は休養を積極的に取り入れようとしている」(同)と確かな手応えを感じている。ドイツで実績を作り、モデルケースとする方針。イタリア・フランス・北欧などEUという同一経済圏の利点を生かし、販売を拡大する計画だ。

 端緒はスポーツという市場だが、あくまで目的は”リカバリー市場の創造“だ。片野専務は「現代人は疲労を抱えて生活している。“休養学”の普及向上や環境整備を進め、ムーブメントを起こしていきたい」と休養のニーズに適した製品や情報を発信し、市場の創造につなげる意向だ。
(文=川口拓洋)
日刊工業新聞2015年12月9日 モノづくり面
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
リカバリーウエアの歴史は、介護施設向けの「床ずれ予防マットレス」の開発から始まった-。そんなストーリーが同社のホームページで公開されています。

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