【COP21開幕直前】相容れぬ電力自由化と温暖化

温暖化対策と自由化の間で揺れる英、独のエネルギー政策

ドイツの電源構成

 温暖化対策と電力自由化の間で、ドイツと英国のエネルギー政策が揺れている。ドイツは市場原理に従ったため、二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭火力が増えた。一方、英国は電力安定供給と温暖化対策を考慮し、自由化から規制へと舵(かじ)を切った。温暖化対策と電力自由化は相いれない関係にある。2016年4月に小売市場が全面自由化される日本でも、ドイツや英国のような問題に突き当たる可能性がある。  ドイツではガス火力発電所の閉鎖が起き、電力の供給不足が懸念されている。自由化で価格競争にさらされた発電会社が、高コストのガス火力を抱えきれなくなったためだ。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度で電力料金に上乗せされる賦課金も上昇し、市場からコスト低減圧力が強まっている。   一方、発電コストの安い石炭火力が増設された。石炭は燃焼で多くのCO2を発生するため、温暖化対策と逆行する事態が起きた。   日本の家庭の1・5倍となった電力料金の上昇を抑えようと、ドイツは固定価格買い取り制度の見直しに着手。新設の再生エネ発電所で発電した電力は、市場価格に一定額を上乗せして買い取る方式を採用した。固定価格での買い取りをやめて賦課金を抑制しつつ、再生エネ普及策は維持する。  90年代に世界に先駆けて電力市場を自由化した英国は、電力価格の高騰に悩まされる。北海油田が枯渇し、エネルギーの輸入が増えて国際価格の影響を受けるようになったからだ。競争原理が働いてドイツと同様、供給力不足も起きている。  そこで英国は供給力を確保しようと政策を転換した。固定価格買い取り制度と同じように発電した電力を安定した価格で買い取る仕組みを原子力発電、CO2回収・貯留装置の付きの火力発電にも広げた。原発、火力の運営コストを支援して供給力を回復させると同時にCO2の排出を抑制する狙いだ。新設の火力発電には排出量の上限を設けた。  自由化と逆行して、規制化に動いている。みずほ情報総研環境エネルギー第1部の吉田郁哉チーフコンサルタントは「現実的な政策だろう」と分析する。  電力自由化は本来、どの電源を使うかは事業者に委ねられるため、日本でもCO2排出量の多い石炭火力の建設計画が相次ぐ。一方の温暖化対策は排出の規制であるため、自由化とは反対の政策だ。  気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)では、世界の新しい温暖化対策が合意される見通し。30年までに温室効果ガス排出量を13年比26%削減する日本の目標は、国際公約となる。自由化と温暖化対策をバランスさせる政策の検討が求められる。 (文=松木喬)

続きを読む

特集