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手術支援ロボット「ダビンチ」利用最前線

浜松医科大、最新型を国立大で初導入
手術支援ロボット「ダビンチ」利用最前線

「ダビンチXi」

 【浜松】浜松医科大学付属病院は、最新鋭の手術支援ロボット「ダビンチXi=写真」を国立大学で初めて導入した。胃がん手術に用いたのに続いて、月内に泌尿器科の前立腺手術での使用を始める。今野弘之病院長は「最新医療技術を提供するのが大学病院の使命。若い医師や看護師の教育面でもメリットがある」と期待する。

ダビンチは米インテュイティブサージカル製。最新型は9月末時点で国内に4台導入されている。医師はモニターで3Dハイビジョン画像を見ながら、鉗子(かんし)を先端に取り付けた4本のアームを遠隔操作する。最新型はアームのスリム化でアーム同士の干渉が少なくなり、動きの自由度も高まった。

人の手で行う手術と比べ、鉗子の動きが安定するため、正確に病巣を切除でき、合併症などの低減につながるという。導入費用は約3億円。

和製“ダビンチ”登場に期待


日刊工業新聞社2015年8月18日付、文=毛利光伸(旭リサーチセンター主幹研究員)


 阿修羅像のような4本のアームを持ったロボットが手術室に導入され、外科手術に革命をもたらしつつある。そのロボットの名は「ダビンチ」、米国インテュイティブ・サージカル社の開発した手術支援ロボットで、正式名称を”da Vinciサージカルシステム“という。

 ダビンチを導入した手術室では、青いドレープに包まれた患者の上に、4本のアームを持ったロボットが覆いかぶさり手術を行う。執刀医は、少し離れたところでコンソールの中のモニターをのぞき込んで、センサーを取り付けた両手の指を動かす。ロボットが手術するのではなく、ロボットを遠隔操作して外科医が手術を行う。既に日本でも約200台のダビンチが導入され活躍している。

 ダビンチのアームの1本は、内視鏡になっている。手術部位を、3D画像で見ることが可能で、最大30倍まで視野を拡大することができる。他の3本のアームは多関節のマジックハンドのようになっており、さまざまなタイプの鉗子(かんし)などを装備できる。

 執刀医の手とメスの動きの倍率を調整するスケーリング機能や手の震えを除去する手ブレ防止機能も装備。微細な動きが必要とされる手術にその威力を発揮する。また、ダビンチはいすに座ったまま肘をアームレストにおいて操作することができ、執刀医の負担を減らす。コンソールをもう1台、追加することで、研修医が手術の様子やダビンチの操作を執刀医と同じ目線で観察でき、匠(たくみ)の技を学ぶことも可能だ。

かさむ維持費


 外科手術のイメージを一変したダビンチだが、問題もある。機器自体が2億円以上と高額であることに加え、消耗品も高額でメンテナンスなどの維持費がかさむことだ。

 また、現状では健康保険適用の対象になっているのは、前立腺がんなどに伴う前立腺全摘手術のみである。健康保険の適用には、その技術が患者の入院期間の短縮や手術で生じた傷が小さいなど、患者にメリットをもたらしたかで評価される。医師の負担低減や教育訓練効果なども評価すべきとの声が上がっており、他の外科手術への保険適用が期待される。

 ロボット、3D画像処理、高精度カメラなどは、日本が得意な技術分野だ。ダビンチの普及で、日本企業も手術支援ロボットの開発に相次いで参入している。近い将来、「日の丸手術支援ロボット」の登場が期待できそうだ。
日刊工業新聞2015年11月20日 ロボット面
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
「手術ロボット=ダビンチ」というイメージが浸透している。日本でもオリンパスなどが手術ロボットの開発と実用化を進めているが、実現はもう少し先になりそうだ。手術ロボットは日本の医療の海外展開を担う役割としても期待されている。ただ良いロボットができても、ブランドイメージの浸透には時間がかかるだろう。「手術ロボット=日の丸ロボット」の図式を定着させるためにも、早期の実用化が望まれる。

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