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近藤那央のロボット解体新書! 力覚センサメーカー ワコーテック(後編)

センサは、普段は見えないところで世界を変えている!
近藤那央のロボット解体新書! 力覚センサメーカー ワコーテック(後編)

世界最小の力覚センサは指先ほどの小ささ

 ロボットの力に関する動作をサポートするのが力覚センサ
 ワコーテックは低価格かつ高性能な力覚センサを開発し、ロボットへの搭載を広めた企業である。

前編はこちら

力覚センサはロボットアームの先に


近藤「大きなセンサを使うような産業用ロボットってあまり見たことがないのですが、どのようなロボットのどの部分に搭載されているのですか?露出していないから見えないのかもしれませんが…」
岡田社長「産業用ロボットをよく見るとね、この赤い力覚センサが付いていることがあります。それがDynPickです。」
鈴木所長「ロボットアームの先に露出しているのがわかるかと思います。『現状のロボットにもあとから付けられますよ』と案内することもあります。いろいろなメーカーに採用されているので、基本色は赤なんですが、メーカーによっては特別に違う色に塗装したりしています」
近藤「アームの先につけているのは、触った情報をすぐにフィードバックするためですか?」
岡田社長「そう、その方が正確です」

近藤「ワコーテックさんのセンサがあったから可能になったロボットというのもあるんですか?」
鈴木所長「わかりやすい例でいくと、作業者がスマートフォンのアルミ筐体を中国の工場で1個ずつ研磨していたのですが、これを自動化したいという依頼があり、ロボットに力覚センサを付けて一定の力で研磨するようにしました。これにより、けっこうな台数を出荷しました」
近藤「すごく繊細な作業をするロボットに大きなセンサを使っているように見えたのですが、大きさと性能の関係について教えてください」
岡田社長「計測できる分解能(※3)はだいたい1000分の1とか2000分の1です。つまり、1000キログラムを量れるセンサは1キログラムまでしか量れません。1キログラムまで量れるセンサは1グラムまで細かく量れます。センサのサイズと量れる荷重範囲は比例関係にあります。」
鈴木所長「力覚センサによってロボットのティーチングも簡単になりました。ロボットのティーチングは時間がかかる作業ですし、作業者にとって面倒くさい仕事です。でも「ダイレクトティーチング」といって、力覚センサをつけてロボットを動かすことで、その動きをそのままロボットに覚え込ませることができます。

社長はセンサの権威


岡田社長「もともとワコーテックは、ワコーというセンサの会社から独立した会社です。私は35年以上MEMSセンサの開発に携わってきて、日本、米国とヨーロッパで240件の特許を取得しました。たとえばスマートフォンには、画面の向きを感知して、画面の縦横を切り替えるセンサが使われています。このセンサは重力加速度を検出するセンサで、3軸加速度センサが使われています。実はこれは私が開発し、ジャイロセンサと合わせで特許を取得したものです。」
近藤「えー!すごい!」
岡田社長「それの特許をライセンスして、今ではいろいろな会社で生産されています。年間30億~50億個になります。他に応用された技術は自動車の衝突検出用の加速度センサに関する特許です。エアーバックの普及で、交通事故死亡者数の大幅減少に貢献しました。もちろんそれを実現したのは自動車メーカーとその関連メーカ-で、ワコーの貢献はほんの僅かしかありません。皆様に感謝しています。」
近藤「センサって、普段は見えないところで世界を変えているんですね」
ニュースイッチオリジナル
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
現在は一般的になっているセンサも、何十年も前から岡田社長が研究してきた成果だと知り驚きました。「まだまだこれからも、新しい、世界をびっくりさせるようなセンサを開発していく」と話すいきいきとした姿が印象的でした。

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