行き過ぎた「ダウンサイジング」を改めるマツダの次世代エンジン戦略

次世代ディーゼルは大排気量化でNOX低減(マツダの現行2200ccスカイアクティブディーゼルエンジン)

 エンジンの排気量を小型化して燃費性能を高めつつ、過給器を使ってパワーを稼ぐ「過給ダウンサイジング」。欧州メーカーが先行し、日本勢の新車も目立ってきた。この流れに背を向けるかのように「大排気量化」を打ち出そうとしているのがマツダだ。燃費性能や排ガス性能を高める上では、むしろ大きなエンジンの方がいいという。なぜなのか。 「ダウンサイジングは行きすぎた。今後は欧州勢も必ず排気量を上げてくるはずだ」。マツダの「スカイアクティブエンジン」の開発を主導し「ミスターエンジン」と呼ばれる人見光夫常務執行役員は断言する。  なぜか。ダウンサイジングの燃費低減効果が限界に達しているからだという。ガソリンエンジンは排気量を小さくするほど過給量を増やさないとパワーが出ない。するとノッキングと呼ばれる異常燃焼が起きやすくなる。防ぐにはエンジン自体の圧縮比を下げる必要があり、中高負荷領域で燃費が悪化する。  もともと過給ダウンサイジングエンジンは低負荷領域で燃費性能がよく、アクセルを踏みこんだ中高負荷領域では燃費改善効果は低かった。低負荷領域の運転を多用する欧州の計測法に対応してモード燃費を高めるには適した技術。しかし、実用燃費との差の大きさは問題になっている。  一方、ディーゼルエンジンを小排気量化すると、同じ出力を出すには高い温度で燃焼することとなり、窒素酸化物(NOX)が増える悪影響がある。「ディーゼルには、排気量を下げる論理的メリットはない。ガソリンエンジンの競争に流されて、排気量当たりの出力向上を競ってきた」(人見常務)。  ではマツダは、どういう方向で開発を進めていくのか。まず、ガソリン、ディーゼルとも燃費性能を飛躍的に高めるために、燃料を薄くして燃やすリーンバーンの度合いを高める。そのためには排気量を大きくした方が空気を取り込みやすい。  ガソリンエンジンでは、過給器を使わず圧縮比を高めることで低燃費化する。現行のスカイアクティブエンジンでも採用した方向性だ。かたやディーゼルでは「もっと意図的に排気量を大きくした方がいい」(同)。NOXの発生を抑え後処理装置などのコストを低減できる。比較的小さい出力の用途に大排気量エンジンを使えば、部品を小型軽量化し燃費低減できるという。  さらに負荷が低い時には気筒を止める「気筒休止」を併用すれば「低負荷から高負荷まで、すべての領域でダウンサイジングエンジンに燃費で勝てる」(同)という。  課題もある。まずは税金。自動車の保有に対し毎年かかる日本の自動車税は、排気量に応じて税額が上がる仕組み。税制の改正は一朝一夕にはいかない難事だ。大排気量の車ほど大きく燃費が悪いという一般的なイメージも根強くある。  こうした向かい風に打ち勝てるだけのエンジンを作れるのか。流行や他社の動向に流されず、正しいと思う道を進む独自性が、今のマツダの魅力の一つ。開発中の次世代エンジンに期待がかかる。

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