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“空の産業革命"へ!ドローンシティーの実現を目指す第一人者

野波千葉大特別教授に聞く。「(2030年には)人を乗せている機体もある」
  飛行ロボット(ドローン)による〝空の産業革命”が始まっている。その応用分野は物流や土木、農業など幅広い。ドローンの第一人者である千葉大学の野波健蔵特別教授に聞いた。

 ードローンの実用化が進んでいますね。
 「ドローンで高度50-250mの空間が手軽に活用できるようになった。農業では上空から作物の生育状態を測定し、遅れているところにだけ肥料をまく『精密農業』や、メガソーラーの太陽光パネル点検など用途は幅広い。測量や警備、設備点検は15年に実証試験が始まっており、16年には事業化する。運送は16-17年の試験、18年の事業化。宅配は18-19年の試験、20年には事業化するだろう」
 
 「ただ人間の上を飛ぶには10年かかる。ドローンが機体異常を検知したら、安全な場所を探して自動で降りられなければならない。安全を判断できるだけの頭脳が必要だ。現在は人が見守っている環境では自在に飛べる。ドローン自身が判断するには、リアルタイム画像処理による障害物回避が必要だ。現在はレーザーで距離や空間を計測しているが、電線などを100%検出できるわけではない。人間や車、バイク、水面の認識など計算能力の向上を待つことになる」

 ー航空法が改正され、都市部など人口密集地では活用しにくくなりました。
 「法規制は厳しい方がきちんとした産業育成につながる。規制が甘く、事故が多発してはドローン産業全体にマイナスだ。機体の安全設計や操縦者の訓練、運用管理など、まじめに取り組む事業者が損をしてしまう。一方で、ドローンに合わせて都市を設計する構想がある。マンションへの小包配送など、ドローンが飛行する区域を決め、その下は水辺にして人が入らないようにするなど工夫する。20年には〝ドローンシティー〟を実現したい」

 ー中国メーカーが市場を席巻しています。日本の産業戦略は。
 「警備やインフラ監視には国産機が向くだろう。モーターや電池などの基幹部品と頭脳にあたる制御ソフトはトレーサビリティーが必須だ。価格よりも信頼性が重視される。さらにドローン単体でなく、管制システムとセットで提案する必要がある。この通信方式、制御技術の標準化は、これから主戦場になる。我々はコンソーシアム方式で技術開発や製造、販売、技術認証などを分担している。参画企業は170社。それぞれの強みを生かして国産ドローンを産業に育てる」

 ー2030年のドローンの姿は。
 「あらゆる場面で活用され、人を乗せている機体もあるだろう。ドローンは自動車よりも輸送効率が高く省エネだ。高速道路のような新しいインフラを整備しなくてすみ、貸駐車場程度のスペースさえあれば離着陸可能だ。インフラのない新興国とインフラの更新を控える先進国、ともに投資効果が高い。空で渋滞を起こさないように準備する必要はあるだろう」
日刊工業新聞2015年11月13日付「100周年特集」より
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
先日、「バックトゥーザ・フューチャー」の日があったが、1982年に公開された映画「ブレードランナー」の設定は2019年。子どものころ映画を観て、空を飛ぶクルマなどあの世界観に魅了された。あと4年だが、10年後れぐらいでそれに近づくのか。その時にドローン市場をリードしている企業はどこか。トヨタ自動車、グーグル?アマゾン?それともこれから誕生する米国のベンチャー?

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