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「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(7)リーダー教育に厚い壁

しらけた雰囲気を一変させたある幹部の言葉「私は間違っていた!」
 日本航空(JAL)では月に1回、本社2階にあるウィングホールで部長級以上の幹部社員が集まる「リーダー勉強会」が開かれる。このベースは、経営破たん後の2010年6月に役員54人を対象として行われた研修会「リーダー教育」だ。リーダー教育は京セラからやって来た役員が中心となり、1カ月間に17回集中して行われ、組織をけん引するリーダーのあるべき姿を植え付けた。

 京セラ取締役の大田嘉仁が、名誉会長の稲盛和夫からJAL社員の意識改革担当を打診されたのは09年の年の瀬。「JALの再建は誰がやっても失敗すると言われていて、すぐには返事ができなかった」と当時の苦しい胸の内を明かす。

 長年秘書として仕えた稲盛からの頼みを断り切れず、10年2月にJALに入った大田は京セラとの企業文化の違いに驚いた。最初は意識改革のために何をしたらいいか戸惑ったが、「会議などで一部の役員から“賃金カットは一般社員だけにしてくれ”といった発言があり、人間性を磨く、リーダー教育の必要性を感じた」と話す。

 大田は10年5月、リーダー教育実行のため「意識改革推進準備室」を立ち上げ、社内からかき集めた4人の社員と準備を始めた。当初大田は1回3時間・週5回、合計25回やりたいと考えていたが、更生計画の提出が10年6月末に迫り、策定作業に追われていたため、平日は週4回にして1回の時間も短くし、その分土曜日に半日やることでまとまった。
 
 紆余(うよ)曲折を経て始まったリーダー教育だが、役員の反応は鈍かった。週に1回、稲盛も講演したが、「この忙しいときに京セラの人間は何を考えているんだと思っているのが、しらっとした雰囲気の中で伝わってきた」と大田は振り返る。京セラでは研修後に「コンパ」と称してお酒を飲みながら歓談するのが通例だが、稲盛と話そうとするJALの役員はおらず、孤立していた。

 雰囲気が大きく変わったのは、子会社であるJALウェイズの社長だった池田博が「稲盛さんの話を聞いて、これが経営だと思った。私は間違っていた」と発言したところからだったという。池田はその後、JALウェイズで「池田塾」を開き、稲盛の考え方を社員に広め始めた。(敬称略)
日刊工業新聞2015年03月13日 建設・エネルギー・生活面
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
最初に「リーダー教育」と聞いたとき、組織を管理するマネージャーをイメージしました。しかし、京セラの「リーダー」は、組織をけん引する、文字通りリーダーを指します。部下の人生や生活の責任を負う、リーダーが組織をけん引するからこそ、利益を生む、闘う集団にできるというのが、その根底にあります。

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