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実質賃金は上がっているの?停滞しているの?

9月は前年比0・5%増も夏季賞与は2年ぶりの減
実質賃金は上がっているの?停滞しているの?

10月に行われた官民対話の初会合

 厚生労働省が9日発表した9月の毎月勤労統計調査(速報)によると、物価変動の影響を加味した実質賃金は前年同月比0・5%増と3カ月連続で増えた。ベースアップ(ベア)を含む2015年度の賃上げ効果が徐々に表れた格好だ。ただ同日発表された15年の夏季賞与は前年比2・8%減と2年ぶりに減少した。給与水準は持ち直しつつあるものの水準は低く、これに賞与減額が加わったことで個人消費の回復力が鈍っているようだ。

 調査は従業員5人以上の事業所が対象。9月の所定内給与は前年同月比0・4%増の24万538円と9カ月連続、所定外給与(残業代)は同1・4%増の1万8997円と3カ月連続の増加で、これらを合わせた定期給与は同0・4%増の25万9535円。この定期給与に一時金などを加えた現金給与総額は同0・6%増の26万5527円、実質賃金は同0・5%増だった。

 他方、15年夏季賞与は前年比2・8%減の35万6791円。9月の雇用数で、一般労働者数が前年同月比1・5%増なのに対し、パートタイム労働者は同3・3%増と伸び率が高く、非正規労働者の増加が賞与の減額につながった。

 政府は産業界との官民対話を月末に開き、賃上げの見通しなどを聞き取る予定。16年度の法人実効税率の引き下げ幅を予定より拡大し、賃上げや設備投資の喚起につなげたい意向だ。非正規労働者の待遇改善なども促し、賃上げが個人消費を喚起する経済好循環の早期実現を目指す。
日刊工業新聞2015年11月10日付4面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
夏季賞与がマイナスとなった理由について厚生労働省は、1月に実施されたサンプル入れ替えの影響と基本的には賞与が支給されないパートタイム労働者の比率の増加を挙げています。しかし、前年より2・81%増えたとする経団連調査との「乖離」はどこから来るのか。

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