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職人の技術とタブレット端末の融合による「人づくり」の快挙/佐賀県立唐津工業高校

大工の国家資格に1年生全員が合格!
職人の技術とタブレット端末の融合による「人づくり」の快挙/佐賀県立唐津工業高校

唐津市相知町にある「町切水車」の取り付け作業を行う生徒

 佐賀県立唐津工業高校は2014年に創立70周年を迎えた。モノづくりを通じた地域社会への貢献、部活動を通して心身を鍛えるという二つの「人づくり」を教育の柱に、将来の技術者を育んでいる。

 機械、電気、土木、建築の4学科を設ける。このうち97年に新設した建築科は工業高校には珍しく1学年40人中10人ほどが女子生徒だ。そんな建築科で14年に起きた“ある快挙”が高校関係者の話題を呼んだ。大工の基礎となる国家資格の技能検定3級に1年生全員が合格したのだ。同校を卒業した池田積校長は「全国でもまれなこと」と胸を張る。

 その背景には厚生労働省の「ものづくりマイスター制度」がある。13年にマイスターとして認定され、大工や職業訓練校の講師として活躍する林田俊彦氏が、週に1回出張授業を行う。佐賀県の県立高校では14年度にタブレット端末(携帯型情報端末)が導入された。生徒は講師の不在時も、録画した手本となる動画を見返すことで、効果的に技術向上につなげている。

 一方、地域連携にも活発に取り組む。唐津市相知町は江戸時代から残る農業用水に使う「町切水車」が風物詩だが、時代の経過とともに廃れていった。復活を望む住民の声に応え、建築研究部の生徒数人が取り付けに携わった。また同市では毎年11月に九州を代表する祭りの一つ「唐津くんち」が開かれる。過去に消失した曳山(ひきやま)を復旧するため、イメージの土台となる模型を製作した。

 佐賀県内の高校では2年連続で定員割れすると学科の廃止が検討される。「地域連携で認知度を上げ、工業に進学したい子どもが増えればうれしい」と池田校長は期待する。
 (文=増重直樹)

【DATA】
▽校長=池田積氏
▽所在地=佐賀県唐津市
▽学科構成=機械科、電気科、土木科、建築科
▽総定員=480人
▽主要設備=マシニングセンター、太陽光発電装置、CADシステム、パワーショベル、トータルステーション
▽主な進路=トヨタ自動車日産自動車アイシン精機、九州電力、九電工、新日鉄住金、住友林業、佐賀大学、福岡工業大学
日刊工業新聞2015年11月06日 中小企業・地域経済2面 連載「育成・モノづくり人材」より
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
佐賀県のタブレット端末を使った教育は、導入負担や不具合などの問題もあって賛否両論あります。 全生徒への一斉導入の是非はここでは置いておくとして、適切なポイントに使えば有効な教育ツールになるという事例のひとつが唐津工業高校の取り組みだと思います。

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