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マルチマテリアルの”弱点”を見える化する技術とは?

青山学院大が複合材の衝撃変形を解析。ひずみの分布を高速撮影画像で測定
マルチマテリアルの”弱点”を見える化する技術とは?

アクリルとポリウレタンの複合材が変形していく(青山学院大提供)

 青山学院大学理工学部機械創造工学科の米山聡教授らは、複合材に衝撃を与えて材料同士の境界面が破断する過程のひずみの分布を測定できる画像解析技術を開発した。瞬間的に衝撃波が伝わって複合材を壊していくメカニズムを解析できる。異種材料を組み合わせる自動車のマルチマテリアルなど、複数材料の接合部の強度解析に提案していく。
 
 複合材の試験片に重りを高速でぶつけ、変形して壊れる様子を高速カメラで撮影する。撮影時間は約10マイクロ秒間(マイクロは100万分の1)。1マイクロ秒ごとの画像から試験片の変形量を測定し、ひずみの分布を算出する。
 
 今回、「画像相関法」という画像解析のアルゴリズムを改良し、境界面に対応させた。従来は複合材や亀裂の発生などにより、材質が不連続で変化する材料の変形については計算できなかった。新手法では、高速カメラで撮影するだけで解析できる。さまざまな形状や材料に対応可能な汎用性の高い試験システムになる。

 実験では平らな境界面に対して垂直や平行、斜めに衝撃を与え、衝撃波の伝わる過程や境界面で衝撃波が反射する過程の解析に成功した。今後、ボルト締結部など複雑形状の異種材料の解析法を確立する。

 複合材の接合部は材料によって衝撃の伝わる速度が変わるため、境界面にひずみが集中して破断する。故障メカニズムが分かれば対策を講じやすい。今後、自動車部品や航空機部品などの信頼性試験での採用を提案していく。
日刊工業新聞2015年04月14日 科学技術・大学面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
 異種材料を組み合わせる上で、ネックとなるのが接合部の信頼性だ。強度をどう保つのか、そのためには壊れていく様子を仔細に把握することが必要だ。特に自動車では衝突時の力の伝わり方は千差万別。データの蓄積が実用化の道筋になる。

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