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トヨタのディーゼルエンジン戦略とは?―ラインアップを統廃合

豊田章男社長「ディーゼルには独自の良さがある」
トヨタのディーゼルエンジン戦略とは?―ラインアップを統廃合

「AD」型ディーゼルエンジンを搭載する「アベンシス」

 トヨタ自動車はディーゼルエンジンのラインアップを統廃合する。2018年をめどに欧州向けモデルの一部に搭載している排気量2000―2200ccの直列4気筒(直4)「AD型」エンジンの生産を打ち切る。AD型の領域は提携先の独BMWから調達するエンジンでカバーする。トヨタは同2400―2800ccと同1400ccのエンジンに経営資源を集中。外部調達も交え、地域ニーズに対応する供給体制を敷く。

 現在、AD型はポーランドにある豊田自動織機との共同出資工場でのみ生産している。欧州向けステーションワゴン「アベンシス」、スポーツ多目的車(SUV)「RAV4」に搭載する。

 AD型は05年に投入したが、搭載車両の販売が思うように伸びなかった。モデルが古く欧州勢と比べエンジン自体の競争力も低下しているため完全に打ち切る。ポーランド工場での同1400cc直4ディーゼル「ND型」の生産は継続する。

 今後は、自社では主に新興国向け戦略車に搭載する直4ディーゼル「GD型」と欧州やインド向けのND型に注力する。一方、提携先のBMWからは同1600cc、同2000ccのディーゼルを調達する。

 ディーゼルエンジンは独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題で、販売への影響が懸念されている。VWはディーゼル車の販売時期の見直しを表明。日産自動車と仏ルノーの最高経営責任者(CEO)であるカルロス・ゴーン氏も「欧州連合(EU)でのディーゼル車需要は下がる」と指摘する。

 ただアジアではディーゼル車の一定の需要がある。豊田章男トヨタ社長も「ディーゼルには独自の良さがある」としており、トヨタはディーゼル車を継続する考えだ。
日刊工業新聞2015年10月30日総合1面
清水信彦
清水信彦 Shimizu Nobuhiko 福山支局 支局長
 BMWからディーゼルを調達する以上、同クラスの生産を自社で打ち切るというのは当然のような話ではあります。  焦点は新規開発。ND型に当たる小型ディーゼルについては新型開発を打ち切ったのではないかと。  トヨタはモジュール設計の手法を取り入れて次世代エンジンの開発を進めています。シリンダーの設計を何種類かに標準化し、それを組み合わせていろいろなエンジンを作るようです。2年くらい前に聞いた話では、ディーゼルエンジンの標準シリンダーは1種類に集約するという話でした。小型ディーゼルをトヨタが自社開発するというのは「全く聞いてない」(関係者、これも2年くらい前)。  新興国向けの主力車である「IMVシリーズ」向けに最近刷新した「GD」型をやめるとは考えにくいので、このND型をフェードアウトする方向なのでしょう。

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