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ネットワークで賢くなる工作機械―新体制・DMG森精機が投入したシステムとは

インダストリー4.0連載第二部#05
ネットワークで賢くなる工作機械―新体制・DMG森精機が投入したシステムとは

DMG森精機のCELOS(セロス)導入の様子

 インダストリー4.0(I4.0)の実用化は、工作機械にも変化をもたらす。インターネットにつながって“賢く”なるマザーマシンの将来像とはどのようなものか。
 
 **仕込みの時期
 10月にイタリアのミラノで開かれた欧州国際工作機械見本市(EMO)の会場。日本の工作機械メーカー首脳からは肩すかしをくらったとの意見が聞かれた。「期待したほどは進歩としてはまだ」(花木義麿オークマ社長)、「今のところビジョン、スローガンのレベル」(山崎智久ヤマザキマザック社長)。

 一方で「今は基盤づくり。表に出せるまであと1、2年はかかる」(稲葉善治ファナック社長)という見方もある。各社とも確実に技術的な仕込みを進めている状況だ。

 ドイツのDMG MORI(旧ギルデマイスター)と経営統合し、新体制となったDMG森精機。I4.0の最新状況に最もアクセスしやすい立場にいると言っていいだろう。そのDMG森精機が「I4.0的なものを埋め込んだ」(藤嶋誠専務執行役員)として投入したのが、新オペレーティングシステム「CELOS(セロス)」だ。
 
 **機能高める解
 NC(数値制御)装置を内部に組み込んだ操作盤。もともと日本の森精機と独ギルデマイスターでそれぞれ複数メーカーのNCを採用しており、両社で操作性をそろえつつ機能を高めるための解がセロスだった。最大の特徴がネットワークにつながって賢くなる点だ。

 画面上に加工スケジュールや作業指示書を表示したり、パソコン上にあるCAMソフト(CADから加工データを作るソフト)を、工作機械から操作したりできるのは、ネットワーク接続機能ゆえ。省エネ管理や、多数のセンサーを機械に搭載して性能と機能をより高める上でも、セロスは重要な拠点となる。「いずれ外部企業が開発したソフトも動くようにしたい」(同)。
 
 **安全性が課題
 課題もある。まずはインターネット接続の是非。森雅彦社長は「今のインターネットは水道に毒を流しているようなもの。安全性はあり得ないレベル」と言う。

 もう一つはやはり標準化の問題。DMG森精機は、セロスと統合業務パッケージソフト(ERP)がデータをやりとりできるようERP最大手の独SAPと情報交換したことがある。だが標準化が進んでいないため実現できなかった。

 NCは、ファナックなどの専業メーカーや、内製するオークマなども高度化を進めており、転換期にある。I4.0とドイツ勢の最新動向は、見落とせないファクターになる。
日刊工業新2015年10月27日付総合面1
清水信彦
清水信彦 Shimizu Nobuhiko 福山支局 支局長
 工作機械(のNC装置)がネットワークにつながるとどんな世界が見えてくるのか。DMG森精機は「セロス」をベースにして実にいろいろなことを考えているようです。となれば当然、オークマもヤマザキマザックもジェイテクトも考える。ほかの工作機械メーカーも考える。中小メーカーとなるとNC機器メーカーだよりの面も大きくなるのでしょうが、そこはファナックも三菱電機も考えているようで、これからどんな世界が広がってくるのか非常に楽しみ。さらには、欧州の有力NC機器メーカーであるシーメンスとの差がどう出てくるのか。日本勢が遅れるようではまずいし、先行した場合は標準化に持ち込む必要がある。  担当記者も、新しいサービスや機能を細かく見て把握して、標準化の動向とも併せて、わかりやすく伝えていく必要があると感じます。

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