村田製作所は一日にして成らず(12)営業力は情報力

直販体制で顧客を囲い込み

昨年整備した台湾の電波暗室棟の内部

**答えは近くに  2000年代前半。ITバブル崩壊後の村田製作所は赤字転落は免れたものの、V字回復を達成する同業を横目に業績低迷に苦しんでいた。「忘れかけているものがあるのではないか」―。低迷の原因を必死に探る経営陣。答えは身近なところにあった。突破口となったのは、顧客満足度(CS)に重きを置く経営理念への原点回帰だった。  海外メーカーの台頭など、電子部品業界の競争環境は激化の一途をたどる。トップシェアを確保する同社の主力製品も、いつシェアを奪われるか分かったものではない。トップを走り続ける強さは、製品力や技術力に加え、CSを軸とした営業体制が根幹にある。  「時には自分の首を絞めかねないこともやらないといけない」。営業本部本部長で、上席執行役員の岩坪浩は言い切る。同社は納入実績のある製品についても、コストダウンの方法を自ら提案するケースもある。コストダウンは製品価格の引き下げを意味する。しかし、「他社にシェアを奪われるなら、部品の売上総額が伸びなくてもシェアを維持する動き方を選ぶ」と岩坪は強調する。  一方、かゆいところに手が届くきめ細かな営業スタイルも強み。競合は販売効率の観点から代理店を使うことが多いが、村田は顧客に密着するため直販にこだわる。欧米や中国などに加え、インドやブラジルにも販売拠点を整備。岩坪は「直販体制は同業に比べて進んでいる」と胸を張る。  岩坪は直販のメリットを「直接顧客とやりとりすることで、生の声が吸い上げられる」と説明。顧客ニーズや競合の動向など営業部隊の“取材活動”が武器になる。代理店のフィルターを通れば、顧客の微妙なニュアンスまで把握するのは難しい。  スマートフォンなど電子機器の設計拠点が集積する中国圏では、上海と台湾に電子機器のEMI(電磁妨害)を計測する電波暗室棟を整備した。営業担当が客先の技術者を連れて行き、EMI対策をアドバイスしながら製品を提案。サービス体制の徹底で、顧客の囲い込みにつなげている。  収益だけを追うのではなく、こうした泥臭い営業手法が今の村田を下支えしている。日々の小さな取り組みが積み上がって大きな信用となり、競合との差別化を生み出す。 (敬称略、肩書きは当時のまま)

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