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ホンダは技術の先進性をアピールできるか

航続距離110kmのPHVや10速の自動変速機。モーターショーでは新型FCV
ホンダは技術の先進性をアピールできるか

ホンダの八郷社長と新開発の10速AT

 ホンダは24日に栃木県芳賀町で開いた技術説明会で、電気自動車(EV)モードの航続距離を従来比3倍の110キロメートルまで伸ばしたプラグインハイブリッドシステムを開発したと発表した。18年にも米国で発売するプラグインハイブリッド車(PHV)に搭載する。世界最多の段数となる10速の自動変速機(AT)を開発したとも発表。渋滞時に対応した自動運転技術も実演した。いずれも商品化の時期は明らかにしていないが、環境・安全先進技術の開発進捗をアピールした。

 【エネルギー密度向上】
 新開発のプラグインハイブリッドシステムは、バッテリーのエネルギー密度を向上し搭載するバッテリーの量も増やして、高速道路でもEV走行が続くように設計。現行「アコード」のPHVのEV走行距離は37キロメートルでその3倍まで伸ばすという。

 競合の現行PHVのEV走行距離は50キロメートル前後が多い。長いEV走行距離を売りにして訴求する戦略だ。研究開発子会社である本田技術研究所の大津啓司常務執行役員は「燃料電池車(FCV)など排ガスゼロの時代が来るまでの橋渡しとしてPHVは有効」としており、PHVの開発を重視している。

 【部品を一体化】
 新開発した10速ATはこれまで別々だった部品を一体化するなどして、6速ATとほぼ同じ全長に収めた。「FF(前輪駆動)向けに開発するために搭載性が課題で小型化した」(担当者)。

 10速から6速、7速から3速など3段飛びの変速を実現し、変速の応答時間を3割以上短縮するなど、走りや燃費を両立したという。ホンダは米国の高級ブランド「アキュラ」で独ゼット・エフ(ZF)から9速ATを調達している。10速ATは自社開発で生産もホンダで行うとしているが、具体的な搭載車種や商品化の時期は明らかにしていない。

 一方、説明会では高速道路の渋滞時の運転を支援する技術も披露した。カメラとレーダーで前走車や白線を認識して、自動で加減速と操舵(そうだ)を行う。これまで自動操舵は時速65キロメートル以上でしかできなかったが、0―65キロメートルにも対応し渋滞時の運転の疲労を軽減する。

 会場ではカーブでスムーズに操舵と加減速を自動で行い、前走車との間に割り込みが入っても安定して運転を維持する実演を行った。「近い将来に商品化する」(担当者)としている。

「エコカーはPHV強化」(八郷ホンダ社長)


日刊工業新聞2015年10月19日付の記事から一部抜粋


 ホンダの八郷隆弘社長は日刊工業新聞社のインタビューで、エコカー戦略については「燃料電池車(FCV)が普及するまでの期間は、電動化を軸にする」とし、これまで強化してきたハイブリッド車(HV)に加え、プラグインハイブリッド車(PHV)の開発を推進する方針を示し、18年に米国で発売する計画も明らかにした。ディーゼル車については、欧州とインドでディーゼル車を生産・販売しているが、「VWの問題があるかないかにかかわらず、電動化に代わってまでディーゼル車が伸びるとは考えていない。積極的にグローバル展開することは考えていない」と述べた。

トヨタの「ミライ」より室内空間大きく


 10月28日に報道機関向けに始まった「第44回東京モーターショー」。ホンダが新型燃料電池車(FCV)を公開した。「環境性能はもちろん運転する楽しさや使う喜びも併せ持っている」。八郷隆弘ホンダ社長は新型FCV「クラリティフューエルセル」をこうアピールした。消費税込みの価格は766万円。補助金を差し引けば558万円で購入できる。16年3月に官公庁向けにリース販売を始め、後に一般販売する計画。初年度は200台の販売を見込む。

 燃料電池スタックを小型化しエンジンルーム内に収め5人乗りを実現。トヨタが14年末に発売した量産FCV「ミライ」は4人乗り。ミライと比べ室内空間の広さを売りにして先行するトヨタを追う。三部敏宏執行役員は「立ち上がりの生産規模は慎重に行くが、エコカーの究極の形はFCVだ」と話し、改めてFCVを重視する考えを示した。
 
日刊工業新聞2015年10月28日 自動車面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
この10年ほどホンダが特に4輪車で技術をリードしてきたとは言いがたい。PHVについても改良していくことはいいのだが、後追い感がある。FCVへの「つなぎ」なのはそうなのだが、ホンダ全体で販売、技術戦略、ブランディング(いわゆるクルマ作り)がかみ合っていない気がしてならない。

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