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村田製作所は一日にして成らず(5)グローバル化はどこまで進めるのが正解か?

意外と低い海外生産比率
村田製作所は一日にして成らず(5)グローバル化はどこまで進めるのが正解か?

フィリピン工場の竣工式で笑顔を見せる村田社長㊧(12年10月)

**新工場が産声
 2012年10月22日。社長の村田恒夫は、いつになく上機嫌で壇上に立った。「ムラタグループ全体にとって、非常に重要なプロジェクト」と位置づけるフィリピン工場がこの日、完成を迎えたからだ。敷地面積22万7646平方メートル―。海外で最大規模を誇る生産拠点だ。念願だった新工場が産声を上げ、村田は胸をなで下ろした。

 需要が急拡大するスマートフォンやタブレット端末(携帯型情報端末)の生産拠点は、アジアや東南アジア諸国連合(ASEAN)に集積。同社も「高まる供給責任に応えるため」(村田)に海外拠点の拡大が急務となっている。

 というのも、同社の海外生産比率は14年3月期見込みで約27%。売り上げの9割を海外で稼ぐ企業としては、かなりの低水準だ。競合の日系電子部品メーカーを見ても、TDKが87・8%、太陽誘電が68%(いずれも13年4−12月期時点)と、大きな差があるのは明らか。村田は「同じ土俵で戦わないと厳しいものがある」と打ち明ける。

 海外部品メーカーの台頭、先の読みにくい為替動向。生産性の向上や設備コストの低減などで、国内生産を維持してきた同社だが「海外生産を増やさないとどうしようもない状況」(コンポーネント事業本部本部長常務執行役員井上亨)にまで事態は進んでいる。

 フィリピン工場の規模拡大や汎用品の海外生産移管を加速させることで「(海外生産比率の)目指すところは40%近辺」とする村田。国内は利益率の高い製品に力を入れる考えで、生産品目のすみ分けをこれまで以上に明確にしていく。

自動化不可欠


 とはいえ、アジア地域では年々人件費が上昇。「労務費が安いだけで、海外に持って行ける時代ではなくなりつつある」と村田は話す。海外拠点でコストメリットを出すには、自動化・省人化が不可欠。まずは稼働から20年ほどが経過し、高い経験値を持つタイや中国工場で生産の合理化に着手している。

 海外生産を増やすにあたり、国内雇用をいかにして守るかは今後の課題。ただ少なくとも、海の向こうには同社を待っている顧客がいる。海外生産比率の拡大は村田製作所が真のグローバル化を果たすための分水嶺となる。(敬称略)
日刊工業新聞2014年02月24日 電機・電子部品・情報・通信
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
村田製作所の海外生産比率は現在でも30%程度だろうか。競合他社と比べてかなり低いが、まったくハンディキャップにはなっていない。長い目でみれば海外比率の引き上げを打ち出してはいるものの、国内工場にも積極投資しており短期的にこの比率が大きく動くことはなさそう。

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