村田製作所は一日にして成らず(4)次の舞台で主役を張れるか?

新事業で問われる成果

ムラタ・フィンランドのクリーンルーム

**どうしても欲しかったMEMS技術  「どうしても微小電気機械システム(MEMS)技術が欲しかった」―。デバイス事業本部本部長で、上席執行役員の薗田聡は、当時を振り返る。2012年1月。村田製作所はフィンランドのVTIテクノロジー(現ムラタ・フィンランド)を買収。念願のMEMS技術を手に入れた。村田の主力事業の一つで、センサーなどを扱うデバイス事業本部の社員は小躍りした。  村田がMEMSにこだわるのは、センサー事業の拡大に不可欠な技術だからだ。同社のセンサー事業は圧電セラミックを応用した製品が中心で、デジタルカメラの手ぶれ補正用などに供給してきた。ただ「(精度では)MEMSに勝てない。ここに入らないとセンサー事業は伸ばせない」と、薗田は危機感を募らせていた。  MEMSセンサーは、成膜、露光、エッチングといった半導体の微細加工技術が肝。村田にとっては未知の分野で、産業構造も大きく異なる。村田の得意とするセラミック分野は、材料から生産まで一貫生産する垂直統合がものを言う世界。一方のMEMS分野では「うまく水平分業ができている」(薗田)という。  例えばMEMS加工にはファンドリー(製造受託)を使い、ソフトウエアでは得意な企業と協業する。「各レイヤーの技術を組み合わせ、トータルで顧客に価値提供する」(同)ことが、最良のビジネスモデルとなる。競合もこれまでとは異なる半導体メーカーが多い。薗田は「彼らのスピード感と提案力に負けないようにしないと」と気を引き締める。  VTI買収から約2年。水平分業を使いこなすノウハウは蓄積されつつある。VTIとの相乗効果として特に顕著なのが自動車向けだ。社長の村田恒夫も「ジャイロセンサーと加速度センサーを一体化したコンボセンサーなどが好調」と相好を崩す。VTIの製品力と村田の販売ネットワークを組み合わせ「VTIが持っていない顧客層からの引き合いも高まった」(薗田)。  今後もVTIの技術を生かしたセンサー群の開発に力を入れる方針で「ヘルスケア向けなどを狙う」と社長の村田の鼻息は荒い。水平分業という新たなビジネスモデルを手にした村田製作所。新分野への挑戦は始まったばかりだ。 (敬称略、肩書きは当時のもの)

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