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有田焼とクラウドファンディングの相性は?

佐賀県が補助制度を2015年も実施
有田焼とクラウドファンディングの相性は?

大慶の磁器製調理器具「UTSUWA美」

 佐賀県は有田焼の窯元などに向けた「クラウドファンディング利用促進事業補助金」を2015年度も実施する。クラウドファンディングはインターネットを通じて個人から少額投資を集める仕組み。「チャレンジングな事業ができる」(佐賀県有田焼創業400年事業推進グループ)ことから、伝統産業の振興に役立てる。投資募集にかかる経費を補助率2分の1、81万円を上限に助成する。

 補助金実施は14年度に続き2年目。15年度は事業費243万円の枠内で3件程度を採択する考え。マイクロ投資プラットフォームを運営する、ミュージックセキュリティーズ(東京都千代田区)を通じ資金を集める。14年度は有田焼メーカーの大慶(佐賀県有田町)、久保田稔製陶所(同)の2件が補助金を活用して資金を集めた。

 大慶は磁器製調理器具「UTSUWA美」の製造販売資金として、171万円を調達した。電子レンジやオーブンでの調理に対応する有田焼で、見た目の美しさにこだわることでそのまま食器として食卓に並べられることがコンセプト。また、久保田稔製陶所はセラミック製コーヒーフィルターのリニューアル資金として314万円を集めた。同社のロングセラー製品で、近年は海外メディアで取り上げられるなど販路を広げている。いずれも「有田焼」の固定化したイメージから離れつつ、産地ブランドと機能性を活用して新たな顧客層に訴求している。

 佐賀県有田町や同伊万里市などを中心産地とする伝統磁器「有田焼」は、2016年に創業400年を迎える。だが、安価な輸入食器の利用増や磁器食器自体を使わないといった生活様式の変化を受けて、産地売上高はピークである1990年ごろの約8分の1規模にまで落ち込んでいる。そのため佐賀県では節目の年である2016年を契機にした有田焼復興を目指して、海外プロモーションや国内市場での新たなユーザー開発に力を入れている。クラウドファンディング活用はその一環で、情報発信とともに関連企業の「持続的なイノベーションを支援する仕組みづくり」が目的。
日刊工業新聞2015年04月13日 列島ネット面記事に追記
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
昨年度の事例2件は募集期間を大きく残して出資枠が埋まったとか。また、佐賀県窯業技術センターでは3Dプリンターを使った磁器材料による直接造形技術を実用化中。伝統産業こそ次世代モノづくりとの親和性が高いのかも知れません。

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