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容器包装の新素材、水と二酸化炭素に分解されるプラスチックに注目!

レジ袋有料化、その先の未来

海洋プラスチックごみ問題に対する社会的な関心が高まるなか、解決策のひとつとして生分解性プラスチックへの注目が集まっている。この新素材を採用した容器包装は日常生活でも目にする機会が広がりつつあるが、実は構造や特性によってさまざまなタイプがあり、さらなる開発も進んでいる。そんな「生分解性」の世界に足を踏み入れてみよう。

海で分解するタイプも登場

「生分解性」とは自然界に存在する微生物によって、最終的に水と二酸化炭素に分解する特性のこと。その条件は大きく分けて三つ。コンポスト、土壌、海洋である。コンポストとは、微生物の働きが活発化しやすい設備や装置内で、有機物を微生物によって分解させ堆肥にする処理方法を示す。

現在、約1千万トンと推計される国内のプラスチック生産量のうち、国内で流通している生分解性プラスチックは約2300トンと、国内市場に占める割合は大きくない。しかも陸域の土壌、あるいはコンポストでの分解を前提とした生分解性プラスチックが主流で、海洋分解性を持つプラスチックはわずか数種類しか存在しないのが実情で、そもそも微生物の働きが活発化しにくい海洋下で生分解性を与えることは困難と考えられてきたが、ここへきて海洋生分解性プラスチック開発が加速。さまざまな技術課題を克服した製品群や採用事例が広がってきた。

容器包装など見込まれる用途拡大

すでに実用化されている代表的な製品として知られるカネカの「カネカ生分解性ポリマーPHBH」は、微生物が植物油を摂取して体内に蓄積したポリマーを精製して作られるもので、土壌だけでなく、さらに条件が厳しい海洋生分解性の認証も受けている。国内ではすでにコンビニエンスストアで提供されるストローなどに採用されている。

「PHBH」を使用したストロー

一方、三菱ケミカルの「Bio PBS」は2種類のモノマーを共重合して得られるもので、高い耐熱性を発揮することから、食器などへの応用が可能で用途拡大が見込まれる。枯れ葉や生ゴミを発酵させたコンポスト(堆肥)に入れただけで常温で分解が進むことが特徴だが、海洋生分解性を高めた製品開発にも取り組んでいる。

例えばこの3月には「Bio PBS」を用い、海洋生分解性を高めたごみ袋が京急グループに採用されると発表。同グループが実施する海岸などの清掃活動に利用される見通しだ。三菱ケミカルでは「これを契機に海洋生分解性レジ袋ニーズにも対応し市場の拡大を促進していきたい」としている。

「Bio PBS」を用いて海洋生分解性を高めたゴミ袋

ほかにも、化学品大手のダイセルが手がける植物由来の酢酸セルロースは、繊維用途や液晶保護用フィルムなどに使われている。さらに同社は従来の品質を保持したまま、海洋での生分解性を高めた酢酸セルロースを2020年1月に開発。将来的には年間数千トン以上の生産体制を整え、新たな用途開拓を模索していくとしている。

イノベーションの原動力に

7月からのプラスチック製レジ袋有料化を見据え、こうした生分解性プラスチックの機能に着目したレジ袋の開発も進む。ワンウェイプラスチック全体のわずか2%にすぎないものの、環境に配慮したライフスタイル変革への第一歩と位置づけられるレジ袋。製袋メーカーにとっては、有料化に伴う需要減少は死活問題である。こうした中、新たなイノベーションが生まれつつある。

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