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名古屋はどう変わる?高層化進む名駅、出遅れ感の栄

名古屋市の2大商業地区である「名駅(名古屋駅)地区」と、「栄地区」が変貌を遂げようとしている。2000年以降、「JRセントラルタワーズ」をはじめ高層ビル建設が立て続けに進んだ名駅地区、出遅れ感のあった栄地区。その栄も、ここへきて再開発計画が相次ぎ立ち上がり、巻き返しに動く。名駅も27年のリニア中央新幹線開通に向け、さらなる大規模再開発が進む。自治体は高級ホテルの誘致を積極化する。名古屋の街の風景は、どう変わろうとしているか。(名古屋・浜田ひかる)

【公園再整備】

栄地区の中心を南北約2キロメートルにわたって貫く「久屋大通公園」。木々に囲まれ、日本最古の電波塔の「名古屋テレビ塔」が立地する、栄地区を象徴する風景の一つだ。今年、そこが大きく変わる。

「もったいない存在だった」。名古屋テレビ塔の大沢和宏社長は同公園について、こう指摘する。公園の東西に商業施設などが立ち並ぶが、公園があるが故に人の流れがそこで分断されるという皮肉な現象が起きていた。

名古屋市がパークPFI(民間資金を活用した社会資本整備)制度を活用して進めている再整備では、今までなかった飲食・サービス店などもズラリと並べ、にぎわいの創出を図る。7月に供用を始める予定だ。

同公園の再整備に呼応して周囲の再開発計画も相次ぎ立ち上がっている。名駅地区に先行を許していた高層ビル計画も進み、景色が様変わりしそうだ。

3月下旬、名古屋市は大丸松坂屋百貨店と共同で再開発を計画する「錦三丁目25番街区」について、三菱地所を代表とするグループを共同事業者候補に選んだと発表した。地上36階、高さ約200メートルの高層商業ビルが26年に開業する計画だ。

百貨店「名古屋栄三越」(中区)は、ビル所有会社が建て替え構想を公表。ビルの詳細はまだ公表されていないが、高さは180メートル級と言われる。19年に閉館した「中部日本ビルディング(中日ビル)」(同)も建て替えられ、24年に31階建て、高さ約170メートルの新ビルを開業予定。「『食』をテーマとした商業施設を立ち上げる」。こう打ち出すのは、18年に閉店した百貨店「丸栄」(同)の再開発計画を公表した興和(同)の三輪芳弘社長。年内にも3階建ての新商業施設をオープンする計画だ。

【リニアに照準】

3月25日、名古屋市はリニア開通に向けたJR名古屋駅東西の広場の整備計画を発表した。駅東側にあり名駅前の景色を象徴する円すい形のモニュメント「飛翔(ひしょう)」が、撤去されることになる。

「JRセントラルタワーズ」とモニュメント「飛翔」(名駅地区)

JRセントラルタワーズ、「ミッドランドスクエア」(中村区)、「大名古屋ビルヂング」(同)、「JPタワー名古屋」(同)―。00年以降、高層ビルが次々に建ち風景が一変した名駅地区。リニアに合わせる形で再開発計画は続く。

高さ160―180メートル、南北400メートルにわたる巨大ビル。17年の発表時、「まるで壁のようだ」などと話題となった、名古屋鉄道の再開発計画。「名鉄百貨店」(同)や「近鉄パッセ」(同)などを含む、名駅周辺エリアを一体開発する計画で、27年の開業予定。名駅地区も、その印象を大きく変えそうだ。

【高級ホテル】

「名古屋はホテルが弱い」。名古屋テレビ塔の大沢社長はこう指摘する。同塔は高級ホテルが入居し、今夏オープン予定。ただ現状では名古屋市内には各国要人が宿泊できるような高級ホテルが圧倒的に少ない。愛知県によると米旅行誌の格付けを基にした高級ホテル数は東京約50軒、大阪約20軒に対し、名古屋は10軒に満たない。

この状況を打開すべく愛知県と名古屋市は共同で高級ホテル誘致を目的とした補助制度を創設した。建設する事業者に対し県と市がそれぞれ10億円規模の補助を実施する。国際会議の誘致などにつなげ、国際都市としてのブランド力を向上したい考えだ。

日刊工業新聞2020年4月6日一部抜粋

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