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国内1位・2位が資本提携、ニッポン造船が中韓に対抗する

国内1位・2位が資本提携、ニッポン造船が中韓に対抗する

今治の檜垣社長(右)とJMUの千葉社長

国内造船最大手の今治造船(愛媛県今治市、檜垣幸人社長、0898・36・5004)と同2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU、横浜市西区、千葉光太郎社長、045・264・7200)は、商船分野の設計・営業部門の共同出資会社「日本シップヤード」を10月1日付で設立する。資本提携では今治造船がJMUの発行する新株を引き受ける形で30%を出資することも決めた。価格競争力を強める韓国、中国の造船に、日本も1・2位が手を組むことで対抗する。

新会社の資本金は1億円で出資比率は今治51%、JMU49%。従業員は約500人でうち450人が設計部門、残る50人が営業部門という。液化天然ガス(LNG)船を除く商船全般で基本設計、企画開発、受注営業、マーケティング業務などを手がける。社長はJMUの前田明徳取締役専務執行役員、副社長は今治の檜垣清志専務が就き、今治の檜垣社長とJMUの千葉社長は非常勤取締役で就任する。

今治とJMUを合わせた造船量シェアは国内市場でほぼ50%、世界市場で12%になるという。韓国と中国の大手はそれぞれ世界シェア20%近く持ち、今治とJMUを合計しても海外のライバルには及ばない。新会社を作った理由を今治の檜垣社長は「中韓両国で統合の動きが進み、このままでは日本の造船業は立ちゆかなくなるとの危機感で双方が一致した」と述べ、JMUの千葉社長は「造船の世界の勝負を決めるのは規模ばかりではない。設計のリードタイムを短縮し、最新技術で最先端船を建造すれば中韓大手にも対抗できる」と力を込める。ただ、船の受注を決めるのは基本的には船価で、提携により成果をどれだけ出せるかは不透明感も残る。

今治の造船所は10カ所、JMUは5カ所だ。韓国大手はLNG船やコンテナ船を10隻レベルで大量受注し、同型船を造船所に振り分けてスピーディーに造ることで短納期とコストダウンを図っている。新会社も同型船建造を効率よく振り分けられるかがカギとなる。

今治の檜垣社長は「M&A(合併・買収)だとどうしても強者、弱者の関係が決まってしまう」とし、JMUの千葉社長も「経営統合は浸透までに2年以上の長い年月が必要。効果をスピーディーに出すには今回のように資本業務提携する方が手っ取り早い」と話す。“韓国・中国への対抗”という共通の御旗のもと成果が求められている。

日刊工業新聞2020年3月30日

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