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パナソニックもデンソーも…社食で「SDGs」、“海のエコラベル"食材を活用

パナソニックもデンソーも…社食で「SDGs」、“海のエコラベル"食材を活用

海のエコラベル認証食材を使ったメニュー(パナソニックの社食)

海の生態系を守って生産した海産物「サステナブル・シーフード」を社員食堂で提供する企業が増えている。従業員がいつも利用する社食で持続可能な開発目標(SDGs)の目標14(海洋保全)に貢献できるからだ。6月にはサステナブル・シーフードを推進する企業が連携組織を発足させ、普及と定着に向けて発信力を高める。

パナソニックが連携組織 海洋保全で団結

サステナブル・シーフードは、捕りすぎず、海を汚染せずに漁獲した海産物の国際認証「MSC」「ASC」を取得した食材。ともに“海のエコラベル”と呼ばれる。企業は社食でラベル付食材を提供することで、漁獲量を守る生産者を支援できる。従業員も昼食を食べる普段の行動でSDGsに参加できる。

パナソニックは2018年3月に大阪府の本社にサステナブル・シーフードを導入後、20年3月末に42拠点、1年後の21年3月末には100拠点へと拡大する。

生産者だけでなく、社食を運営する給食会社もMSC・ASCの認証がないとサステナブル・シーフードを提供したことにはならない。パナソニックの働きかけがあり、給食会社13社が認証を取得し、食品流通会社にも認証が広がった。

損保ジャパン日本興亜、デンソー、横浜銀行なども社食にサステナブル・シーフードを採用した。パナソニックCSR・社会文化部の喜納厚介課長は「ユーザーが声を上げないと社会は変わらない」と語る。1社ではラベル付食材の拡大に限界があり、他社にも導入を呼びかけている。

6月発足予定の連携組織にはサステナブル・シーフード採用企業が参加し、普及と定着に向けて協力する。「中小規模の給食会社の支援も重要」(喜納課長)と位置付ける。サステナブル・シーフードを求める企業が団結し、給食会社の認証費用や業務負荷を抑える方法を提案する。

タムラ製作所、助言得て社食に導入

タムラ製作所は1月27日から月1回、東京都と埼玉県の2拠点でサステナブル・シーフードの提供を始めた。初回は白身魚フライカレーなど4品、全420食を用意した。

“海のエコラベル”認証食材のメニューを提供するタムラ製作所の社食

18年5月にあった経団連のセミナーにCSR推進本部の岡本恭一副本部長が参加し、知り合った環境保護団体「世界自然保護基金(WWF)ジャパン」の職員からサステナブル・シーフードを紹介された。「身近な場で従業員にSDGsを実感してもらえる」(岡本副本部長)と直感した。経営陣のSDGsへの関心が高く、採用の了解を得られた。

同社が委託する給食会社「はな籠」(埼玉県東松山市)も認証に前向きだった。ただ、進め方に戸惑い、パナソニックの喜納課長に来社してもらって助言を得て準備した。認証食材の確保も課題だった。パナソニックに比べると給食数は少なく、仕入れ先探しが難航した。

同社の食堂には、パナソニックの食堂と同じサステナブル・シーフードの掲示物がある。パナソニックが他社も活用できるように用意した啓発ツールだ。サステナブル・シーフードをめぐり、企業間でノウハウの共有が始まっている。社食がSDGs推進の舞台となり、新たな企業連携が生まれている。

日刊工業新聞2020年3月27日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
中小規模の給食会社のコストを抑える「グループ認証」があるそうです。自社の食堂は「小規模」だからという企業も一度、検討してはどうでしょうか。認証、更新、マークの使用などでコストが発生します。日本企業は団結して発言力を高め、MSC・ASCの運営本部に対してコスト・業務負担の低減を働きかけてほしいです。27日付「SDGs面」から

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