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炭素繊維強化プラスチックの曲面積層機、国産初のロボット型

津田駒工業がNEDOと開発
炭素繊維強化プラスチックの曲面積層機、国産初のロボット型

NEDOと共同開発したロボットタイプのCFRP曲面積層機

津田駒工業は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で国産初となる、ロボットタイプの炭素繊維強化プラスチック(CFRP)曲面積層機を開発した。高精度アームロボットに搭載した小型ヘッドがCFRPの曲面積層を自動化する。積層には炭素繊維に樹脂を含浸した中間材料(熱硬化プリプレグ)を細くカットした「スリットトウ」を用いる。従来のように手作業でシートを貼るよりも部品形状や厚みの自由度が高い。歩留まりが高く大量生産できるため、CFRPの用途も広がる。

津田駒は2008年にCFRPを平面に積層する装置を国内で初めて実用化した。曲面積層機の開発は15年に参加したNEDOのプロジェクトによるが、「自社でも早い段階で取り組んではいた」(坂井一仁取締役)。同様の装置はフランスや米国のメーカーが先行しているが、日本企業はそのサービスに不安を感じていた。炭素繊維と航空機産業双方の振興に関わってくるため、国産機の開発が求められていた。

開発における課題の一つは、複雑形状に積層するための「軌跡精度の高いロボットの選定」(西村勲コンポジット機械部長)だった。ロボットは決まった場所への正確な移動には強いが、指示した通りの軌跡を描く動作は不得手だ。幸い航空機部品事業でも取引のある川崎重工業が開発したロボットを採用し、性能面で前進した。

周辺装置には本業の繊維機械の技術を生かし、スリットトウをボビンに巻き取る「トラバースワインダー」も開発した。これまでスリットトウの加工は米国企業が独占的に受注しているため「コストや納期の面で難があった」(坂井取締役)が、発売済みのプリプレグをカットする「スリッター」とのセットでユーザーがスリットトウを準備できるようになった。計16本のスリットトウを制御してボビンからヘッドへ送る「クリール」は、津田駒の得意分野。他社製品と異なりボビンを別装置に搭載して、ヘッドを小型化することができた。

工作機械周辺機器も活用した。CFRPを積層する金型の位置決め装置には、自社製品の円テーブルの技術を搭載していた。しかし従来品では回転速度がロボットに追いつかない。この問題は15年に発表した「ボールドライブ駆動」技術の採用で解決した。

曲面積層機には津田駒の強みが結集している。制御ソフト全般を自社開発しロボットにも関わったため、現在注力する「自動化提案事業にも好影響があった」(西村部長)。

初号機は近く、川崎重工に納入する。「これまでも曲面積層機への要望はあった」(坂井取締役)ため期待が高まる。今後は「熱可塑性CFRPの曲面積層にも挑戦していく」(西村部長)考えだ。

(取材=金沢支局長・本荘昌宏)

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