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介護施設を救うか、5Gで顔認証システムの仕組み

介護施設を救うか、5Gで顔認証システムの仕組み

食堂の入り口周辺に設置したカメラで顔認証する

SOMPOケア(東京都品川区、遠藤健社長、03・6455・8560)は、NECと共同で介護施設における第5世代通信(5G)利用の実証実験を行った。顔認証によって利用者の食事準備を効率化するシステムと人工知能(AI)で食事量を自動測定するシステムを導入し、介護職員の負担軽減や業務効率化への影響を調べた。同社は今後、顔認証システムを中心に介護施設での導入を検討している。

SOMPOケアは2月3日から7日にかけて介護付き有料老人ホーム「ラヴィーレ舟入」で実証実験を行った。食堂内や周辺に設置したカメラで利用者の顔を識別し、アレルギーや食事形態などの情報を調理室内のタブレット端末に表示することで、利用者ごとに異なる献立を迅速に用意する狙いだった。

食事の前後で食べ物を撮影し、利用者の食事量をAIで数値化する試みも同時に行った。これまで食事量の記録は人力で行っており、同システムの導入で記録を自動化し職員の負担軽減を目指した。

顔認証はほぼ100%の精度で認証可能だった。同システムを同社の運営する150施設に導入した場合、人件費などを含め約1億2000万円を削減可能。一方、食事量の数値化はミキサー食の認識が難しく改良の余地があった。

AIで食事量を数値化し記録する

同社フューチャーケアラボの片岡真一郎所長は「両システムとも実用化にはあと数回の実証実験が必要だ。今回は21人の利用者を対象にしたが、今後は50人から100人が利用する食堂で効果を検証したい」と話した。

介護施設は無線LAN用機器や物理サーバーを設置する空間の確保が難しいため5Gを利用すれば安定して大容量・低遅延のデータ通信が可能になる。

顔認証で4Gを利用した場合、1秒間に1回程度しかデータの通信ができないが、5Gは1秒間に3―4回の通信が可能。両システムの導入にはカメラと物理サーバーが必要で、初期費用は数百万円かかる。NECのOMCS事業部の清松和明システム部長は「将来的には顔認証でもクラウドサーバーを利用したい」としている。

日刊工業新聞2020年3月3日

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