東京の未来を創造して!サービスロボ、都内5カ所で実証

竹芝での実証試験。運搬ロボットが人に追従して荷物を運ぶ

人手不足が深刻化する中、東京都は人間と同じ場所で協働するサービスロボットの導入を積極的に後押ししている。2019年度には「Tokyo Robot Collection」を開始し、人間と共存しつつサービスを提供するロボットの実証実験を都内5カ所で実施。調理や運搬、清掃、案内などをこなすユニークで最先端のロボットたちを都民にお披露目した。小池百合子都知事は、実証実験を通じて「先端技術を見てもらい、東京の未来を想像してほしい」と力を込める。 7月に東京都港区の竹芝客船ターミナルで行われた調理や警備などを担うロボットの実証実験。人に追従する運搬ロボットや、たこ焼きの調理やビールサーブを担うロボット、通行人に声をかけるロボット、警備ロボットなどが参加した。生産年齢人口が減少しつつある中、労働力の確保といった都の課題について、ロボットによって解決する姿を国内外にアピールする狙いがある。 東急不動産や鹿島が竹芝地区のエリアマネジメントとして実施するイベント「第5回竹芝夏ふぇす」において公募で選定したロボットの導入効果を検証した。東急不動産や鹿島は竹芝地区で先端技術を取り入れたスマートシティの開発を進めている。その一環として、地域住民や近隣の就業者向けに音楽ライブや飲食空間の提供などを行う竹芝夏ふぇすを実証の場として提供した。東急不動産の担当者は「3―5年後に街に実装されるようなロボットが集まった。(竹芝夏ふぇすが)人間とロボットの共生の可能性を示す場になれば」と期待した。 また、今回の竹芝夏ふぇすにおける実証の意義について、都戦略政策情報推進本部戦略事業部の前林一則先端事業推進担当課長は、「夜間の屋外イベントという環境におけるロボット導入時の課題などが検証できる」と説明した。  7月に実施された品川駅中央改札内コンコースでの実証実験。人工知能(AI)を活用して、駅の利用者に対し、構内や駅周辺の案内などをするシステム10種類を展示した。複数言語に対応したティファナ・ドットコム(東京都目黒区)のAI接客システム「AIさくらさん」やモノゴコロ(東京都渋谷区)の案内AI「バーチャルアテンダント」などが展示され、利用者を案内した。JR東日本が実証フィールドを提供している。 JR東は今春に開業する高輪ゲートウェイ駅でコミュニケーションロボットやデジタルサイネージ(電子看板)によるAI案内システムの試行導入を予定している。駅利用客からの質問への対応を重ねることでAIが学習し、回答精度を高めるのが実証の狙いの一つだ。 JR東の担当者は、「将来の駅案内サービスを品川から世界に発信したい」と意気込みを述べていた。  11月には、東京・丸の内の丸の内ビルディング敷地内で運搬ロボットの実証実験が行われた。労働力不足や運搬作業での業務負担の軽減といった都が抱える社会課題の解決策として、運搬ロボットの有効性を検証した。日本の農業や食文化を発信するイベント「ジャパンハーヴェスト2019」に合わせて実施したもので、運搬ロボットは多くの来場者が行き交う中、農作物を安全に確実に運ぶことに成功した。  これらの実験は、物流現場において顧客に最後に届ける「ラストワンマイル」を想定して行われた。また、アップクオリティ(東京都新宿区)が「マーブル」と「エフィボット」を使用し、荷下ろし場所から約100m離れた販売店舗まで荷物を運搬した。マーブルが自律的に目的地に向かう中、農作物を積んだエフィボットがマーブルの後を追走した。  東京駅前の丸の内ビルという不特定多数の人が行き交う環境下で、安全性や安定性といったロボットの実用化に向けて不可欠な課題を検証した。  東京都大田区の羽田空港第一ターミナルで警備業務を担うロボットの実証実験が11月に行われた。国内外からの空港利用者の増加による警備業務の負担増加などが見込まれる中、多種類の警備ロボットを活用した業務効率化の可能性などを検証した。  実証にはセコムや綜合警備保障(ALSOK)、テイケイの警備ロボの計4種類が参加した。セコムの「バーチャル警備システム」は公共空間で初めて実証したという。近くにいる人と目線を合わせるといった警備員の立哨時の動作を大型ミラーディスプレー上のキャラクターで再現し、抑止効果を検証した。このほか、警備ロボットがカメラの死角にある不審物を発見したり、ゴミ箱の中を点検したりする様子もあった。  都の担当者は、「多くの利用者がいる羽田空港でロボットが活躍する姿を公開し、需要を高めたい」と力を込めた。また、日本空港ビルデングの担当者は「(都の実証事業を通じて)羽田空港で導入できそうな警備ロボットが出てくることに期待したい」と述べた。  12月には、東京都千代田区の大手町ビルで、三菱地所が実証フィールド提供者となって警備ロボット「SQ―2」のエレベーター連動デモンストレーションが公開された。エレベーターを使用して複数階のフロアをロボットが自律移動し、警備を行う。複数フロアをロボット1台で警備できることから、導入費用を節約でき、省スペースにもなる。  ロボットは三菱地所も出資している明治大学発ベンチャーのシークセンス(東京都千代田区)製。また、エレベーターとの連動システムは三菱電機が開発した。ロボットは警備拠点から遠隔でリアルタイム操作が可能で、周囲360度を見回すカメラから提供される映像によって、警備員は周辺の様子を観察できるのが特徴だ。 19年は大手町ビルの4階と6階で移動実験を進め、20年1月からは4階と6階に加えて、7-9階も移動できるようにした。さらに三菱地所の担当者は、20年春をめどに「複数のロボットで全フロアを回れるようにしたい」と述べていた。  東京都では、19年度より「Tokyo Robot Collection」を開始しているが、ロボット以外の先端技術に関する取り組みとして、自動運転技術の社会実装に向けた取り組みも行っている。19年度は、早期の事業化を促すことを目的として自動運転技術を活用した交通サービスの実証実験を2件実施した。八丈島の自動運転バスに乗車した島民の方からは、「普及すれば車がなくても買い物に行ける」と期待の声をいただいた。都としては先端技術を活用し、都民のQOL(生活の質)を高めたい。自動運転やロボットの性能自体はデモではなく、実用の段階にきている。 その上で実用化には法整備とコストの低下が不可欠だ。例えば今回使用した運搬ロボットは現在、公道で走ることはできない。このため、国とは今回の実証で得られた課題を共有したい。さらに都では国家戦略特区の制度を利用することも検討している。  コストが下がらないことには普及はしづらいものの、コストに関しては都が購入費を直接補助することは難しい。 一方でメーカーが将来の需要を把握できれば下がっていくのではないか。そのため、今回のような実証を通じ、導入を検討する事業者や都民に技術性能を知ってもらいたい。今後は事業者と国の橋渡し役になり、導入の後押しをしたい。

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