カーナビに泣いたパイオニア、データ・センサーで再生なるか

経営再建中のパイオニアがトップに矢原史朗社長を迎え新たなスタートを切った。矢原社長は、これまで会社をけん引してきたカーナビゲーション事業に代わり、データやセンサー事業を成長の柱に位置付ける。自動車業界が直面する変化に対応するためスピード感を持って経営改革に当たろうとしている。(取材・松崎裕) 「それぞれの従業員が当事者意識を持って情報を共有し、経営陣がスピーディーに正しい判断を下す」。1月に就任した伊藤忠出身の矢原社長はパイオニアの再生にとってスピードが重要との考えだ。 パイオニアはカーナビの開発費が膨らみ収益が悪化、2019年3月に香港投資ファンドの救済を受け上場廃止となった。10月に社内カンパニー制度を導入、現場に裁量権を与え、権限と責任を持たせる社内改革を進め意思決定の迅速化を図っている。 経営悪化の要因となったカーナビは車載事業を中心とした「モビリティプロダクトカンパニー」とし収益改善に取り組む。全従業員の15%に当たる約3000人の人員削減のほか、国内外の生産・販売拠点の統廃合も進める。国内の市販用カーナビは生産子会社を譲渡して、委託生産に切り替えてスリム化を図っている。だがカーナビなどのモノづくりの分野の改革だけでは再建はおぼつかない。 カーナビや車載情報システムに詳しい富士キメラ総研(東京都中央区)の太田雅浩氏はカーナビ業界について「近年は中国メーカーが台頭し一定の機能を持つ2万円前後の安いカーナビが普及するなどコモディティー化が進む」と指摘する。販売台数は増えるが単価の下落に歯止めがかからずに利益が出しにくい構造がまん延しているという。各社はカーナビで培った要素技術を次世代の製品・サービスに生かそうと開発でしのぎを削る状況だ。 そうした中、パイオニアは位置情報やテレマティクスを活用したデータ事業を次の成長の柱に据える。矢原社長は「きめ細かい地図や道路情報に付随したプローブデータを加工し企業に提供できる」とする。 19年10月にはデータ事業を中心にした「モビリティサービスカンパニー」を新設。データ事業にたけた外部人材をカンパニーの最高経営責任者(CEO)に迎え入れるなど社内にとどまらずに有用な経営資源を活用する考えだ。矢原社長は「ベンチャー企業などへの戦略的なM&A(合併・買収)も進める。ティア1の強みを生かし自動車メーカーへの提案にもつなげる」としてデータ事業の成長を加速する。 さらにレーザー技術を応用して開発を進める高機能センサー「LiDAR(ライダー)」の拡販にも取り組み、自動運転だけでなく多様な業界への活用を広げようとキヤノンなどと協業も進めている。 かつては名門とされた老舗メーカーパイオニアの再生は緒に就いたばかり。売上高約3500億円の8割近くをカーナビ中心の車載事業が占めており、データ事業はまだ数百億円規模。データ事業やセンサー事業を育て軌道に乗せることが再生の重要課題となる。

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