垂直統合から協業へ舵を切るローム、「5年もすればSiCはコモディティー化する」

ローム・藤原忠信社長インタビュー

ローム公式動画より

―力を入れている自動車市場が低迷しています。 「電動化の加速で車載向け半導体や電子部品は確実に増える。車は4―5年先を見てデザイン・インする。現在、足元の業績が厳しいのは4―5年前の当社に商品力がなかったためだ。2018年の社長就任以来、車や産機向け重視の開発体制に変え、パワーデバイス開発などへかなり人員を配置転換し、民生品向けの開発は絞った。意識改革の成果がようやく出始め、22―23年頃からの新規案件は着実に受注できている。逆に言えば、22年頃までは我慢だ」 ―持続的成長に向けて全社のベクトルを合わせることが重要です。 「10年先を見据えた21年度開始の5カ年中期経営計画の策定を始めた。取締役がかんかんがくがくの議論を戦わせ、必死に考え、ポートフォリオの強化・見直し、M&A(合併・買収)施策の方向性を決め、数字に落とし込み、責任を明確にして実行する。共有したいのは危機感。次世代のSiC(炭化ケイ素)製品が脚光を浴びるが、5年もすればコモディティー化する。当社が弱いモジュールがビジネスには重要で、他社との協業が必要だ」 ―第5世代通信(5G)への期待が随所で聞かれます。 「5G向け開発は乗り遅れており、今進めている。5Gスマートフォンで必要な多数の電源回路などで引き合いがあり、特定用途向け標準IC(ASSP)をそろえる。顧客に言われて作るカスタム品は国内企業が好調な時は大量に使ってくれたが、汎用品と違うので広がりがない。今までおざなりだった、時代を先読みした開発へと意識改革した」 ―近年、500億円前後の積極的な設備投資を続けています。 「当社はこぢんまりとした前工程工場が多い。老朽化しており、中計では生産品目の再編・集約を考慮した建て替えなども考えていく。プリントヘッド生産は中国のみだが、事業継続計画(BCP)の観点で東南アジアなどの既存工場で生産することなども討議していく。外部機関を用いた人材育成への投資にも力を入れる方針。女性の幹部登用推進や、海外人材の役員登用も検討している」 【記者の目】 ほかの半導体メーカーが手がけない家電大手からの特注のカスタムICで、ロームはかつて営業利益率30%超の高収益企業だった。しかし、近年は15%以下。それでも高い数値だが、更なる成長にはこれまでの成功体験への依存の払拭(ふっしょく)が必要という。生産面では強みとしていた垂直統合一辺倒のモノづくりから脱却する方針。変化への対応力が求められている。 (京都編集委員・松中康雄) 日刊工業新聞2020年2月20日 <関連記事> ロームは垂直統合型のビジネスモデルを転換し、半導体受託製造(ファウンドリー)や半導体後工程請負業(OSAT)などへの外注比率を2021年めどに約30%(現状は8%程度)まで高める。市況や顧客からの受注量急増といった変化への対応力強化と固定費の抑制が目的。企業名などは明らかにしていないが、台湾や中国本土などのファウンドリー4社、OSAT11社とすでに協議を始めている。 ロームはウエハー製造からの垂直統合型生産体制による高品質と安定供給を強みとしてきた。今回のモノづくり改革は大きな方針転換となる。産業機器向けや、家電など民生機器向けの半導体パッケージ、モジュール製品などが外注の中心となる。受注数量、外注先の得意・不得意なども勘案しつつ比率を高め、自前主義一辺倒から脱却する。自動車向けは内製がベースとなりそうだ。 繁忙期のみといった形ではなく、一定割合を継続発注して外部と信頼関係を築く。他社の技術を学ぶ側面もある。顧客の製品のプラットフォーム共通化、部品の横展開などによる急な需要増に柔軟対応できるようにする。 同社は2021年度からの5カ年中期経営計画の策定にこのほど着手した。これまでの中期計画は「販売計画だった」(藤原忠信社長)とし、今回はグループ全体の10年先を見据えた上で5カ年計画を立て、そこから各分野に落とし込み、パワーデバイスやパッケージ、モジュールの強化、外部との協業などで具体策を打ち出す方針だ。 多数ある国内工場の生産品目再編や建て替え、海外事業拡大も重要課題。策定には海外子会社も参画し、同社初の本体役員への外国人登用も検討中。中計に先行し、できるものから改革を進める。 日刊工業新聞2020年2月5日

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