ニュースイッチ

スマホで眼科診療、レンズ開発企業が苦節5年でたどり着いた新分野

スマホで眼科診療、レンズ開発企業が苦節5年でたどり着いた新分野

スマートフォンに取り付け前眼部の診察を行う(ヒト用の「スリットランプ METORI―50」)

井澤(東京都板橋区、井沢好恵社長、03・3969・2109)は、眼科向けの照明付き近接撮影装置を開発し、2019年4月から医療機器分野に参入した。スマートフォンを用いて人や動物の目の前眼部を診察できる。ペット用も手がけているコンタクトレンズメーカーが販売元となったこともあり、19年は動物用が好調で月平均10台程度の受注があった。20年からはヒト用の受注も本格的に動きだしており、さらなる飛躍を目指す。

同装置はスマホに取り付けて使用する。前眼部にスリット光を当て、水晶体や網膜などの診察ができる。ヒト用の「スリットランプ METORI―50」と、動物用の「同50V」の2種類を用意。据え置き装置では難しい、寝たきり患者やイヌ、ネコなどの動物に対応できる。

同社は08年創業当初からスマホ、コンパクトデジタルカメラ用の広角や望遠などのコンバージョンレンズを手がけている。眼科向け撮影装置の開発は、13年に新市場開拓の支援を目的に申請した東京都中小企業振興公社のニューマーケット開拓支援事業に選ばれたことがきっかけだった。ビジネスナビゲーターから紹介された筑波大学の眼科医から、寝たきりの患者や、じっとしていられない乳幼児の診察に対応できる装置が欲しいという要望を受けた。そこでコンバージョンレンズで培ったノウハウを生かした製品開発を始めた。

目や眼科向け装置について勉強したが、スリット光に関係して電気の知識が必要となった。開発・製造担当の井沢正男氏は「眼科装置や医療分野の知識が全くなく苦労した」と振り返る。

同装置の完成後から医療機器会社としての体制づくりも始めた。18年に医療機器製造業登録を取得し、販売委託企業と基本契約を結んだ。開発を始めてから5年後にようやく発売にこぎ着けた。今後は「へき地や遠隔医療のツールとして育てていきたい」(井沢氏)と意気込んでいる。(取材・稲垣志穂)

日刊工業新聞2020年2月21日

編集部のおすすめ