イオンに日本電産、MUFG…今年就任する新社長たちに課せられたミッション

日本電産の関次期社長㊧と永守会長兼CEO

経営環境や経済情勢が目まぐるしく変わる中、企業も大胆な変革が求められる。変革の時代を乗り切るため、経営トップを交代する企業も少なくない。2020年に就任する新社長は難しいかじ取りを迫られるが、各社は新風を吹き込むことで、新たなビジネス領域の開拓、事業再編、デジタル対応、海外展開といったミッションに挑む。 カリスマ創業者が白羽の矢を立てたのは社外人材だった。日本電産は、日産自動車の関潤元副最高執行責任者(COO)が4月1日に社長執行役員兼COOに就く。自動車分野向けの事業を拡大するため、日本電産創業者の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)が関氏を日産から引き抜く形で社長に抜てきした。自動車分野ではCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の新潮流が押し寄せ、自動車メーカーだけではなく、関連業界も変革を迫られている。日本電産は新体制下で事業を波に乗せ、2030年度に売上高10兆円の達成につなげる。 川崎重工業も従来とは異なるルートから社長を登用する。金花芳則社長に代わり、精密機械・ロボットカンパニープレジデントの橋本康彦取締役常務執行役員が社長に昇格する。ロボット部門からの社長就任は初めてだ。橋本取締役常務執行役員は内定会見で「ロボット技術を活用し、全社レベルで省人化や自動化を進めるとともに、時代変化にスピーディーに対応していきたい」と力を込めた。 橋本取締役常務執行役員は4月1日付で副社長となり、6月下旬の株主総会を経て社長に就任する。川重はエネルギー・環境プラントや車両、航空宇宙、船舶海洋などと事業が多岐にわたり、ここ3年ほど毎年のように大きな事業損失を出してきた。新社長は各事業の自律的運営を保つとともに、全社的視点をしっかりと持って陣頭指揮を執ることが重要になる。水素プロジェクトや人工知能(AI)など新事業育成も急務だ。半導体ロボットや協働ロボットを立ち上げた手腕に期待がかかる。 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)では4月、メガバンク初となる理系出身のトップが誕生する。亀沢宏規副社長が社長兼CEOに昇格する。亀沢副社長は産官横断の量子コンピューター開発責任者を任されるなど、理系の知識が評価された。 MUFGでも人員削減や店舗の効率化のために、デジタル化は不可欠な要素。コールセンター業務ではAI技術の活用で業務量の削減につなげている。紙の通帳を廃止したEco通帳(インターネット通帳)の導入やデジタル通貨にも今後取り組む。亀沢副社長が成長戦略となるデジタル化をいかに加速させるか手腕が試される。 イオンと日立システムズも新体制下で「デジタル対応」を加速する。23年ぶりに社長交代するイオンは3月1日に岡田元也社長が会長に就き、吉田昭夫副社長が社長に昇格する。イオングループを流通最大手に成長させてきた岡田社長だが、近年は米アマゾンなどネット通販の台頭で競争は激化。デジタル化の遅れに危機感もあった。 吉田副社長は19年3月からデジタル事業の担当になり、英の大手ネットスーパーであるオカドグループとの業務提携をまとめた実績がある。吉田副社長は「リアルの場を持つ強みを生かして、オンラインを融合させていく」と意気込む。 一方、イオングループ内には、岡田社長の長男である岡田尚也ビオ・セボンジャポン社長がいる。吉田副社長は、尚也氏がイオン社長に就任するまでの中継ぎとの見方もあるが、岡田元也社長は岡田家による世襲については明言を避けた。 日立システムズは企業のデジタライゼーション(デジタル適用)に力を入れる。同社の強みであるITシステムの保守・運用を通じて「ドメインナレッジ(顧客の業務知識)」を蓄積してきた。ソフトウエアやシステムを刷新するだけでは新ビジネス創出はもちろん業務の効率化も難しく、同社はITと業務知識を磨き対応している。 16年4月から同社をけん引してきた北野昌宏社長はドメインナレッジにより「業務の幅が広がった」と話す。4月からの新体制ではさらに顧客とのデジタル化の成功事例創出が増えていくと見られる。新社長に就くのは、日立製作所の柴原節男執行役専務で情報・通信を担うサービス&プラットフォームビジネスユニットを束ねてきた。日立はIoT(モノのインターネット)プラットフォーム「ルマーダ」事業をグループの成長エンジンと位置付けており、日立システムズでもルマーダを起点にしたシステム構築(SI)やプロダクトが加速しそうだ。 TOTOは4月1日付で清田徳明副社長が社長に昇格する。温水洗浄便座「ウォシュレット」黎明(れいめい)期から開発に携わってきたほか、人財や財務、購買担当として数字に明るく、働き方改革もけん引。喜多村円社長は「魅力ある人物」と評した。年齢は58歳と決して若くはない。喜多村社長も清田氏のほか、若手も検討したというが、「10年先を見据えて決断する俯瞰(ふかん)力、決断力、誠実さ」を評価して19年9月には後継と伝えた。 清田氏はTOTO17代社長として「『良品の供給、需要家の満足』という理念を引き継ぎ、世界中で必要とされる会社を目指す」と話す。現在は日・欧・米のほか、中国とアジアを強化している。このうち中国は北京や上海など主要都市から「(内陸部の)2線、3線都市にも注力する」考えで、同国の住設事業を17年度の売上高715億円から、22年度には1060億円に引き上げる。新型肺炎に関しては「人命最優先で状況を見極めている」ところだ。 今後は「グローバルが成長のドライバー」と説く。20年4月にはタイでウォシュレットの生産を始めるほか、22年にはベトナムに第4工場を建設、衛生陶器生産を計画するなど新興国市場の開拓が進む。「ベースは地産地消。工場を海外に作り、ブランド力をさらに高める」としている。 4月1日付で三井化学の社長に就任する橋本修取締役専務執行役員のミッションは、25年の長期経営計画の目標に向けてポートフォリオ変革をやり切ることだ。社長交代会見の場で「グローバルで存在感のある企業になるように努める」と抱負を述べた。 現在の淡輪敏社長は14年の社長就任後、石油化学事業の構造改革を断行。次の成長戦略として16年11月にモビリティーとヘルスケア、フード&パッケージングの成長3領域を伸ばし、ポートフォリオを変革する長期計画を発表した。橋本次期社長は経営企画部長として同計画の策定に携わった。渡されるべくして渡されたバトンだ。 ただ、25年度に営業利益目標2000億円に対し、19年度見通しは760億円に留まる。石化製品などの基盤事業のテコ入れや、成長領域に注力する変革の加速が求められる。

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