過疎地の病院を救う…医師同士が共通画面で対話する遠隔医療システム

新しい遠隔診療支援システムの打ち合わせを行う(神戸の開発拠点)

エア・ウォーターは今春、社内分社の医療カンパニーで、医療業界の課題解決を狙った新システムを発売する。重症患者に対応する集中治療室(ICU)専門医の体制が整った大規模な病院と、同医が不足する離島など医療過疎地の病院をインターネットでつなぎ、医師同士が共通画面を見ながら対話し、遠隔診療につなげるものだ。 開発に取り組んだのは子会社のエア・ウォーター・バイオデザイン(神戸市中央区)。神戸市が形成する神戸医療産業都市に、エア・ウォーターが2019年に建設した研究・開発拠点「国際くらしの医療館・神戸」を活動の場とする。 「医療過疎地の病院でも、重篤患者の診療を支援できる仕組みを作りたかった」。エア・ウォーター・バイオデザイン事業企画部医療事業グループの今井美由紀主任は、開発の目的を語る。開発は18年10月に始動し、医師へのヒアリングを重ね製品化を進めた。 開発をリードした高木寛維エア・ウォーター・バイオデザイン取締役は「離れている医師同士が目の前にいるような感覚になれるシステムを目指した。同時にいろんなものを画面表示できる、マルチインフォメーションプラットフォームを考案した」と話す。 電子カルテに呼吸器、生体モニターやカメラ映像などの多様な患者データを専用装置で随時収集し、ネットワークで結ばれたICU専門医のいる病院に送る。患者の状態を常時監視しつつ、共有画面に手書きで書き込んだり、メッセージ機能で注射や点滴、投薬などの指示も可能にした。 開発したシステムは「NOALON(ノアロン)」と命名。ノット・アローンの略で「離れていても高度な医療サービスを受けられる、“1人じゃないよ”という意味を持たせた」(今井主任)。 エア・ウォーターの取り組みは、国の医療行政の動きにも連動する。19年度からテレ(遠隔)ICU体制整備促進事業が始まり、日本集中治療医学会で遠隔ICU委員会も立ち上がった。複数施設のICUとネットワーク連携し、中心となるサポートセンターで遠隔診療支援を行うモデルを構築するものだ。 またICUでの勤務は昼夜問わず重症患者の治療にあたらなくてはならないため、医師の長時間労働の一因となっている。このため遠隔ICUを医師の働き方改革に役立てられないか、検討が進む。 エア・ウォーターの医療カンパニーの西村忍高度医療部担当部長は「当社が手がける遠隔医療支援システムは、過疎地の診療支援に加え、医師の働き方改革もサポートできるものだ」と強調する。 事業を指揮する梶間憲二医療カンパニー高度医療部部長は「米国では遠隔ICUが広がっているが、日本はまだこれから。日本の医師と一緒に日本の環境に適したシステム開発を進めたい。価格も導入しやすいものを目指す」と意気込む。 同システムの運用は医師同士の人間関係も重要だ。エア・ウォーターは現場の医師と連携を密にし、開発を進めていく。(大阪編集委員・広瀬友彦)

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