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台風で樹齢150年の大藤が冠水、従業員200人の総力戦

あしかがフラワーパーク、復旧の証イルミネーション
台風で樹齢150年の大藤が冠水、従業員200人の総力戦

復旧の象徴が鮮やかに輝く(あしかがフラワーパークのイルミネーションスポット「光のふじのはな物語」)

【大藤が冠水】

栃木県足利市の観光施設「あしかがフラワーパーク」は、台風19号の水害で深刻な被害を受けた。冬の名物で点灯間近だったイルミネーションの機材などが水没し、同パークの象徴である4本の大藤が冠水した。被害額は数億円規模となることが予想されたが、従業員らは一致団結して復旧作業にまい進し、営業再開を成し遂げた。

園内は一時、1・8メートル浸水した。台風襲来から2日後に水は引いたものの、受電設備が故障。すぐに発電機を調達し、従業員ら約200人が総出で復旧作業に当たった。泥のかき出し、水没した草花の植え替え、機材の点検・修理などを行い、2019年10月20日に営業を再開した。

【ノウハウ生きる】

運営会社である足利フラワーリゾート(栃木県足利市)の早川公一郎社長は「1週間以上の延期は風評被害を招きかねない」と判断し、11月2日にイルミネーションを点灯すると宣言した。被災から1カ月も経たずに、パーク全体で450万超の電球を使ったイルミネーションを作り上げた。同日夜、宣言通り明かりがともされた。責任者の長谷川広征執行役員は「自前で製作し続け、蓄積したノウハウが復旧過程でも生かされた」と語る。

同園は17年の台風で浸水リスクを認識し、水害への備えを進めていた。早川社長は「30センチ―40センチメートルの浸水には耐えられる準備を事前にしていた」と明かす。だが水害は想定以上となり、停電で排水システムが機能不全に陥るなど課題が浮き彫りになった。今後は水没機器の入れ替えなどを進めるとともに、景観を考慮した水害対策の方法を検討していく。

【花咲かせる】

「全従業員が復興に向けて、気持ちをそろえてくれた」と早川社長。復旧の象徴となったイルミネーションは冬シーズンに55万人の来場を見込む。春に見頃を迎える大藤は「落葉の様子など状態は安定していて、変わらず花を咲かせるだろう」(早川社長)と安堵(あんど)する。鮮やかに咲き誇る大藤の姿を励みに、あしかがフラワーパークの復興に向けた取り組みは続く。(栃木・大川諒介)

日刊工業新聞2020年2月7日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
数年前、あしかがフラワーパークを取材したことがあります。綺麗な園を保つため、従業員の皆さんが自発的に改善活動を行っていたことを覚えています。今回もその現場力が生かされたのでしょうか。

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