未来のモノづくり実現へ、金沢大学の先手

金属AMは研究の主軸になっている(金沢大提供)

金沢大学は学内研究機関「設計製造技術研究所」でスマート設計生産システムの研究開発を進めている。現実空間を仮想空間に再現するデジタルツイン、3次元データを活用するアディティブマニュファクチャリング(付加製造、AM)など、最新デジタル技術を駆使し、北陸で未来のモノづくりを先んじて実現するのが目的だ。時に「実直過ぎると言われることもある」(森本章治所長)という名称には、大学の研究成果を社会実装し、モノづくり産業へ貢献するという強い意欲を表している。(金沢支局長・本荘昌宏) 設計製造技術研究所は2019年6月に設置。16年に発足した先端製造技術開発推進センターを改組した、金沢大としては4件目の新しい研究所だ。 目指すところは「オンデマンドモノづくりを実現するスマート設計生産システムの構築」。日本のモノづくりの今後の傾向は、大量受注して大量生産するのではなく、必要なモノを必要なだけ製造する多品種少量生産だ。 しかし、作るモノが変わるたびに、従来のように設計と試作を繰り返すのではコストがかさむ上に時間もかかる。こうした課題を、デジタルツインやAMなどの最新技術を活用して解決する。そこに研究所を設置した狙いがある。 研究所の組織は設計技術領域と製造技術領域に分かれている。 設計技術領域では、機械学習と最適化、デジタルツインを中心に研究を進める。例えば、複合加工機の熱影響を予測可能なデジタルモデルの開発を進めている。量産品のように実物で試作を繰り返すのではなく、多品種少量生産の場合はデジタルツインを用いて仮想空間上で設計を検討すれば低コストで生産が可能だ。 一方、製造技術領域は「金属AMの活用を主軸に据えている」(森本所長)。松浦機械製作所(福井市)製のハイブリッド金属3Dプリンターを保有し、有効な活用策を探っている。 欧米と比べて、AM導入には「慎重な姿勢」(古本達明教授)だという国内の産業界だが、北陸では特にAMの中でも「粉末床溶融結合法」に積極的に取り組む企業が多い。地の利を生かし「北陸をAMの中心的な地域にしていきたい」(古本教授)。AMは多品種少量生産に適しているため、中小企業にも大いに活用の可能性がある。 このほか、ロボットを用いたフレキシブルなバリ取り技術や、熱可塑性炭素繊維強化プラスチック(CFRP)プレス成形法の開発なども進めている。 二つの領域が連携して研究開発に取り組む強みも生かしていく。設計技術領域の研究成果を踏まえ、製造技術領域で実際にモノづくりをして「研究所内だけで有効性を検証できる」(細川晃副所長)体制を確立する。 ―研究の方向性は。  「製造工程に特化した研究所はこれまでもあった。研究所名称に『設計』が付いていることが重要だ。最新技術を駆使してモノを作る工程そのものをシミュレーションし、企業の研究開発を加速させる」 ―企業との関係は。  「まずは金沢大学の協力会の会員企業や地元企業を中心にニーズを掘り起こし、共同研究を進めていく。特に中小企業との共同研究もどんどん増やしたい。我々の保有する研究成果を積極的に発信していく」 ―今後の体制は。  「専任教員が20年度には現状の7人から9人体制になるが、さらに増やしていきたい。海外の大学から一流研究者を招聘(しょうへい)教授として迎え、企業からもクロスアポイントメント(複数組織との雇用契約)により特任教授を受け入れる準備も進めている。大学法人全体の投資計画との兼ね合いはあるが、将来的には専用の建屋や設備の増強も検討している」

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