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人件費高騰で限界近づく飲食店経営、セルフオーダー決済は救世主になるか

ベンチャー企業でシステム提供増える

飲食店の業務効率化を手がけるベンチャー企業が増えている。背景には、人件費の高騰を吸収するためにオペレーション上でコスト削減が求められていることや、そもそも人口減少に伴って店舗スタッフの確保が困難になっていることなどが挙げられよう。

飲食店の多くは、まずは手を付けやすい広告宣伝費から効率化を進めてきた。ただ、広告宣伝費の削減にも限界がきたこともあり、一部の企業では人件費にメスを入れるステージに入ったと言えそうだ。人件費削減については、セルフオーダーへの対応や、決済の自動化により、ホールスタッフの人数を削減できる可能性が出てきた。

セルフオーダー・システムとしては、飲食店内の各テーブルにタブレット端末を配置して、消費者がメニューを見て、自ら注文をインプットする方式が、回転寿司チェーンなどを中心に普及している。しかし、中小規模の飲食店にとっては、タブレット端末を複数台そろえるための初期費用が重く、導入のハードルが高い。

こうした課題を解消するため、消費者が保有するスマートフォン(スマホ)を利用する、セルフオーダー・システムを開発するベンチャー企業が出てきた。店舗内の各テーブルに貼られたQRコードを各自のスマホに読み込むことにより、当該飲食店店舗のメニューが読み込める。ここで飲食したい品を選択し、決済までスマホで完結するシステムである。

これらのシステムは月額定額制のSaaS(Software as a Service、サービスとしてのソフトウエア)モデルで提供されるケースが多い。飲食店にとっては、注文取りやレジのスタッフ数を削減できる上、メニュー変更の度に紙ベースのメニュー表を刷り直す必要もなくなるなど、メリットが大きい。

ただ、日本ではまだキャッシュレス決済が十分に普及していない。消費者のスマホを活用した注文や決済システムだけでは、利便性を悪く感じ消費者もいよう。従来型の決済システムにも対応していなければ、入店を避ける消費者も出てこよう。二つの決済システムが混在する限りコスト削減効果は限定的と考える。

日本におけるキャッシュレス決済の普及が進み、多くの飲食店に広がることにより、早期に経営効率化につながることを期待したい。

(文=西川拓<野村リサーチ・アンド・アドバイザリー ITセクター>)
日刊工業新聞2020年1月22日

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