ラグビー・ニュージーランド代表のジャージにも通じる「2045年」問題とは?

ハイブリッド芝が敷設された大分スポーツ公園総合競技場

最近、新聞や雑誌の記事で、人工知能(AI)に関する「2045年」問題と言う言葉をよく目にするようになった。2045年にコンピューターの能力が人類を超えると予測されたことに端を発し、それによって起こるさまざまな問題が議論を呼んでいるのだ。このような話題が絶えないほど、AIやテクノロジーの進化のスピードは速い。空間デザインの世界においても、テクノロジーの進化と、コンピューターやAIのできる仕事の領域が増えてきていることを感じる。そんな中で、私が心を打たれた手仕事の話を紹介したい。 通常家具工房では家具の製作の過程で、モックアップを製作する。モックアップとは、工業製品の設計・デザイン段階で試作される、外見を実物そっくりに似せて作られた模型のことだ。今の時代は、この模型づくりにおいてもデジタル化が進み、効率的でより正確に作られるようになってきている。 しかし、私がイタリアで出会ったモデリストは、デザイナーの描いた手書きのスケッチから模型を手作りで造っていた。彼は80代だが、最高の仕事をする匠(たくみ)として地位も高く、世界のトップデザイナーから、尊敬を集めていた。彼の手から作り出された模型には、何か温かみがあり、人の手によるいびつさをも美しさにつながっていると感じた。人間の手でしか作り出すことのできない領域は必ず残ると思わせる体験だった。 昨秋、日本中が熱狂したラグビーW杯で注目されたニュージーランド代表「オールブラックス」のジャージーをデザインした世界的ファッションデザイナー山本耀司氏は、書籍「服を作る−モードを超えて」(宮智泉著・中央公論新社刊)の中で、手の力を大切にしていると語る。コンピューターで型紙を簡単に作れる時代に手で描くことにこだわるそうだ。「自分の手から出ていく魂を信じる」という彼のデザインのファンは世界中に多く、若者からの人気も高い。着ている人と服との勝負をしているという彼のデザインが人々の心を捉えるのは、手仕事の大切さをモノづくりの中に残しているからかもしれない。国は異なるが、手仕事を大切にするのは、匠の仕事に共通する点のようだ。(見月伸一・三井デザインテック・デザインマネジメント部長)

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