ビール注ぐ酒場ロボ実証、居酒屋が抱くもう一つの思惑

池袋で実験中のロボ酒場。ロボがプラカップを取り、サーバーでビールを注ぎ、泡が収まるのを待って客に提供する

キュービットロボティクス(東京都千代田区、中野浩也社長、03・6261・6492)は、養老乃瀧(同豊島区)と共同で、東京・池袋で居酒屋ロボットの店舗実験を始めた。外食ロボの実験は「パスタロボ」や「カフェロボ」に続くもの。不特定多数が訪れる店舗実験を通じて食材と客層の違いによるノウハウを蓄積、より高次元の外食展開につなげる。「ロボットの制御技術とプラットフォームは開発済み。この先、食材が変わっても対応できる」と中野社長は自信を示す。(取材=編集委員・嶋田歩) 居酒屋ロボが稼働する店は「ゼロ軒めロボ酒場」で、ユニバーサルロボット製の協働ロボットが、客の持参した食券に印刷してある2次元コード「QRコード」でビール、レモンサワーなどの商品名を読み取り、プラスチック製カップをつかんでサーバーにセットして、酒類を注ぐ。サワーの場合は最初に氷を入れ、次に原液を入れた後で炭酸を注ぐ。 1杯あたりにかかる時間はビールが40秒、サワー類は100秒。人手の場合とほぼ同じだ。時間を短縮したくてもビールやサワーは炭酸系飲料なので、泡が落ち着くまで待つ一定時間が必要。サワーの場合、提供前にロボがマドラーでかき混ぜる凝りようだ。 ロボ本体の上にある4台のカメラで付近にいる人々を認識。男性と女性、年齢、顔つきなどを識別し、男性なら「キンキンに冷えたビールがおいしいですよ」、女性なら「その髪形、すてきですね」といった声がけを行う。 声がけで客が笑顔を見せたり、商品を注文したりすると“ロボットの得点”として記憶され「次回から検索上位で同じ言葉をかけるようになる」(中野社長)。担うのは人工知能(AI)技術だ。ビールを待つ目の前の客は注文客、奥にいる人は潜在客として区別して、声がけを行う。 今回のロボシステムの本体価格は約700万円。ビールやサワーのサーバーなどの機器を養老乃瀧が所有しているため、安くできたという。「外食チェーンなら業態に合わせて、厨房(ちゅうぼう)機器や提供機器はすでに持っている。ロボシステムをそれに合わせれば済む」と中野社長は話す。 安全性や衛生管理の問題は別として、刺し身を提供するロボットや総菜提供ロボットなども理論上は可能だとする。外食企業でニーズがどれだけあるかが、実用化のカギを握る。 居酒屋ロボについて、養老乃瀧の土屋幸生取締役は「人数確保が難しい深夜時間帯にロボを使うとか、提供メニューを絞って小面積の居酒屋を多店舗展開する方法などが考えられる」と話す。実証実験の場所に池袋を選んだのは、大勢の人が訪れるため。居酒屋大手は客層が中高年男性に偏る悩みを抱えている。ロボの目新しさを通じて若者や女性客、ファミリーなどを新たに呼び込みたいとの思惑もある。 人手不足対策として外食店は自動化やIT機器を導入しているが、店員と客のコミュニケーションやにぎわいが失われ、業績が悪化したケースも多い。食材の質やサービスを保ちつつ、ロボをどう使いこなすかが、普及のカギとなりそうだ。

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