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前代未聞だった中堅保険代理店の倒産劇、粉飾を見抜くなら取引金融機関の数を見よ

AIコーポレーション、資金繰りの厳しさで最後は「51」に

AIコーポレーションは2004年8月に設立。主に損害保険および生命保険の代理店事業を手がけてきた。業容拡大のため、全国に拠点開設を進めたほか、損害保険代理店を積極的に買収することで、18年5月期には年収入高約66億1700万円を計上していた。

しかしこの間、保険業法の改正に伴い従業員を増やしたことで人件費が増加。また拠点開設や買収費用など各種先行投資がかさんでいたことに加え、100億円を優に超える多額の借入金の支払利息負担も重く、水面下では厳しい資金繰りを余儀なくされていた。

こうしたなか、18年9月、国税庁からの指摘を受け、5億円の追徴課税を要求される事態が発生。外部の第三者委員会により、改めて財務および損益内容の精査を実施した結果、長年にわたって事業損失が生じていたことが発覚し、18年5月期までの過去5期における累積事業損失額は約71億円に上り、調査結果を反映させた19年5月期の決算では一気に85億6464万円の債務超過に転落することとなった。

その後、取引金融機関に返済猶予を要請するとともに、再建方針について協議を重ねた結果、スポンサーに事業を承継するスキームでの再建を決定。最終的に光通信(東証1部)の100%子会社、インシュアランスサポート(東京都豊島区)と11月29日にスポンサー契約を締結した後、12月5日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。

ここ最近、粉飾決算が行われていた企業を見ると、共通の特徴として、企業規模に比して、取引金融機関の数が多いことが浮かび上がる。同社はまさにその典型で取引金融機関数は51と前代未聞の数だった。近時、取引金融機関がなぜ急速に増えているのか。果たしてその背景が本当に理にかなったものなのか。今回の倒産は、取引金融機関が多いことが一体何を意味するのかを改めて考えさせられるケースとなったのではないだろうか。

(文=帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2020年1月21日

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