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センサー内蔵コンタクトデバイスの仕組みとは?ネックは価格

センサー内蔵コンタクトデバイスの仕組みとは?ネックは価格

目の周りに貼り付けたアンテナからセンサーに給電する

シードが販売する「トリガーフィッシュシステム」はセンサーを内蔵したコンタクトレンズ型デバイスだ。眼圧の変化によって誘発される角膜曲率の変動を測定し、眼圧変動のピークパターンを最長24時間にわたって検出。緑内障や高眼圧症など眼圧測定が必要な病気の診断を支援する。現在は全国の十数の医療機関が導入しており、今後も学会やセミナーを通じた普及に力を入れる。

グラフ化で活用

2019年12月にシードはスイスの医療ベンチャー、センシメッドを買収したが、買収以前からシードはトリガーフィッシュシステムの承認取得を見据え普及に努めてきた。「目に取り付けるウエアラブルデバイスは他に例がない。当社にとって戦略的な製品に位置付けている」とシード経営企画部の廣田顕也マネージャーは話す。

同システムはコンタクトレンズ型のセンサーを目に装着し角膜の曲率変動を測定する医療機器。センサーの歪みを5分ごとに30秒間測定し、最長で24時間の記録が可能だ。測定結果はグラフ化し医師が患者に説明する際に活用できる。

センサーには一定の電流が流れる「ひずみゲージ」が備わっている。眼圧によって角膜の形状は変化するため、センサーの歪み量を電圧に変換して角膜曲率を測定する。

目の周りにはアンテナを内蔵したパッドを貼り付け、センサーへの給電やデータの受信を無線で行う。アンテナで集めたデータはレコーダーへ送られ、専用ソフトウエアをインストールしたパソコンから保存・閲覧する。

医療機関では通常、空気を用いた測定方法などで眼圧を調べる。従来の測定方法だと夜間の眼圧変動を測定するには寝ている患者を数時間おきに起こし測定する必要があった。同システムは「寝ている間もセンサーを入れるので目の充血などの副作用はあるが、医師・患者の負担を減らせる」(廣田マネージャー)。日常生活に近い環境で測定できる点も特徴だ。

価格がネック

眼球内は房水と呼ばれる液体が循環しており、房水によって眼球内にかかる圧力を眼圧という。高い眼圧が続くと視神経の束が圧迫され緑内障になる場合がある。緑内障は手術や投薬で眼圧を下げる治療が有効だ。

15年に厚生労働省の研究グループが行った実態調査によれば緑内障は視覚障害の原因のうち約30%を占める。年齢を重ねるほど発症の可能性は高まり、症状に気付かず放置して悪化する患者も多い。高齢化が進む日本では対応が急務といえる。

同製品は眼圧と関連する角膜の曲率を測定するため「眼圧そのものが分かるわけではない」(同)。同製品による角膜曲率の測定は保険が適用されず個々の医療機関が独自に検査費用を設定しており、「普及の課題は価格だ」(同)。だが、世界ではすでに35カ国で使用されており、16年には米国でFDA(米国食品医薬品局)の承認を取得。検査機器として普及に期待がかかる。

日刊工業新聞2020年1月20日

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