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現代版「町のネズミと田舎のネズミ」で考える「分断とかい離」

現代版「町のネズミと田舎のネズミ」で考える「分断とかい離」

Image by sibya from Pixabay

人の次はネコが現れ恐怖で体の震えが止まらない。田舎のネズミは「いくらごちそうがあっても、いつも命がけはごめんだ」と町を後にする。『町のネズミと田舎のネズミ』は豊かさとは何かを説くイソップ寓話(ぐうわ)の名作だ。

ネズミの生態に詳しい専門家から、現代版「町のネズミ」の実話を聞いた。最大勢力のクマネズミは熱帯原産のため寒さに弱いが、身軽で高層ビルを駆け上がる。冬でも都市の排熱を生かし繁殖を続ける。

昨年「田舎のネズミ」に不幸があった。オーストラリア政府はグレートバリアリーフの島に生息していたネズミの一種「ブランブル・ケイ・メロミス」の絶滅を確認した。海面上昇による浸水が原因で、地球温暖化の影響により絶滅が確認された初めてのほ乳類という。

世界気象機関(WMO)は「100年に1回しか起きなかった規模の熱波や洪水がいつでも起きる」と警鐘を鳴らす。グリーンランドでは海面上昇に直結する陸氷の減少が顕著だ。

今年は英国で温暖化問題を話し合う締約国会議(COP26)が開かれる。台頭した自国ファースト主義で、分断とかい離が進むのか。どうか町のネズミと田舎のネズミの溝が深まらないように―。庚子年の初めに、願いをかける。

日刊工業新聞2020年1月10日

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