流通網で国内大手に劣る外資が見いだした工具販売の新機軸

イスカルジャパンは顧客志向のサービスを鮮明にする

イスカルジャパン(大阪府豊中市、岡田一成社長、06・6835・5471)が、主力の工具販売で顧客志向を前面にしたサービスの新機軸を打ち出している。1994年設立の同社はイスラエルの大手切削工具メーカー、イスカルの日本法人。国内工具大手に流通網で劣る分、ノーガードの殴り合いを避け、効果的なジャブやボディーブローを放ち、顧客の心を“ノックアウト”させる作戦だ。 「お客さまをしっかり見る」と力を込めるのは、イスカルジャパンマーケティング本部の長竹誉志統括副本部長。工具の国内シェア拡大を目指す中「カバレッジ(販社)の拡大が手っ取り早いが、簡単で効果的な手法をあえて取らない。流通網の規模で国内大手に劣るから」(長竹副本部長)と認識するためだ。「“取った取られた”の営業だと規模の差が如実に出る。だから丁寧な営業」(同)に、かじを切った。 同社は営業マンに対し、顧客がイスカルの工具を使うメリットなどをまとめたデータの提出を義務付けている。顧客にとって製造原価低減などの利点を数値化したもので、営業マンは毎月3件程度のデータを出すが、長竹副本部長は「今までは蓄積したデータを生かし切れていなかった」とみる。 工具を変更するとワーク(加工対象物)の加工速度が変わるが数万点に及ぶ蓄積データは「工具メーカーの中でもトップクラスと思う」と長竹副本部長は自負する。 「当社はオーダーメードの特殊工具が強い。標準品は(工具商社経由など)通常の流通ルートにとどまる場合が多いが、特殊品は営業マンが実際に顧客のもとを訪問する対応が不可欠となる」(同)。このためデータをもとにしたきめ細かなサービスはイスカルジャパンの強みとなる。 もうひとつの狙いは社員教育だ。長竹副本部長は「データを見ると営業マンの営業スタイルが分かる。工具への知識も一目瞭然」とデータ活用は社内基盤の強化にも直結する。 毎年6月頃に同社の神戸テクニカルセンター(神戸市中央区)で開くセミナーも教育の一環といえる。「いかに原価低減し利益向上につながるか」(長竹副本部長)との題目だが、ユニークな点は来場した顧客自らがイスカル製工具を使った改善事例を発表するところにある。信頼関係を築けなければ顧客側は受諾できないため、社員教育のたまものとなる。 2019年就任した岡田社長は現状の工具国内シェア約6%について「10%到達を早期に実現したい」と話す。長竹副本部長も「当社の悲願。シェア2ケタで市場への影響力が出てくる」と強調する。 サービス強化の観点から、営業マンを支えるため効果的な工具提案を支援する非営業部門のマーケティング本部は19年発足した。長竹副本部長が「(工具使用の)データを生かせるサービス面に関しては大手を含む国内他メーカーにひけを取らない」と胸を張る“武器”を手に、イスカルジャパンは「小よく大を制す」戦いに挑む。(取材=大阪編集委員・林武志) <関連記事>

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