【動画あり】ベールを脱いだ「SONY自動車」、走れる完成度にないがソニーの姿勢に注目せよ

CESで公開した「VISION-S(ビジョン エス)」(公式サイトより)

【米ラスベガス=日下宗大】ソニーは6日(日本時間7日)、同社製センサーなどの技術を使った自動運転対応の試作車を公開した。得意とする相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサーや対象物との距離を算出するタイム・オブ・フライト(ToF)センサーなどセンサーを計33個搭載。人工知能(AI)や通信技術の活用で車載ソフトウエアの更新も可能だ。 ラスベガスで7日(同8日)に開幕する家電・IT見本市「CES」前日、吉田憲一郎社長は記者会見し「直近10年のメガトレンドはモバイル(携帯端末)だった。次はモビリティー(移動体)だ」とこの領域に注力する姿勢を示した。ソニーは約20年前にコンセプトカーを手がけたが実際に走る試作車は初めて。 試作車はセダン型電気自動車(EV)。独自ブランドを持たない車メーカーのマグナ・シュタイヤーなど11社が協力した。自動運転性能はレベル2相当。将来は4以上を目指す。360度全方向から音が聞こえる技術など、ソニーならではの車内快適性も追求した。 日刊工業新聞2020年1月8日 イメージセンサーは自動運転やロボットの眼に当たる中核部品。スマートフォンやデジタルカメラに使われる相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサーはソニーが世界シェア約50%と圧倒的なトップに君臨している。長崎県諫早市の既存拠点に製造棟の新設を決めるなど積極投資で韓国・サムスン電子など同業他社をさらに引き離しにかかる。 自動運転やロボットだけでなく、IoT(モノのインターネット)時代において各種センサー需要は爆発的に伸びる見通し。日本勢の得意なアナログ技術が生かせる分野であり、時代の波に乗り遅れないように着実な新製品開発と増産投資が強く求められる。 例えばイメージセンサーの性能向上は検査工程の高度化につながる。近年は全画素を同時に露光する「グローバルシャッター」機能の搭載で、検査の省人化・自動化の実現を後押ししている。同機能を搭載したイメージセンサーは、高速で動く物体を撮像しても動体歪みが生じない。端から順次露光するローリングシャッター方式よりも、検査に必要な画像を正確かつ効率よく取得できる。 ソニーは2019年3月に、裏面照射型画素構造とグローバルシャッター機能の搭載を両立させる独自技術「プレジウスS」を開発した。課題だったセンサーの小型化だけでなく、高感度化やデータ読み出しの高速化も実現した。キヤノンはグローバルシャッター機能に加えて、可視光域と近赤外線域での撮像が同時にできるイメージセンサーを10月に発売。異物混入などの検査の効率化や、検査装置・システムの小型化に役立つ。 ロボットだけでなく、IoT(モノのインターネット)時代において各種センサー需要は爆発的に伸びる見通し。日本勢の得意なアナログ技術が生かせる分野であり、時代の波に乗り遅れないように着実な新製品開発と増産投資が強く求められる。 富士キメラ総研(東京都中央区)によると、イメージングやセンシング関連の部品・デバイスの市場は24年に17年比約62%増の約10兆4500億円まで拡大する見込み。 ロボットの頭脳として、キヤノンは18年に画像処理ソフトなどの発売を契機に工場自動化(FA)市場へ本格参入した。デジタルカメラや事務機器で長く培ってきた光学技術や画像処理技術の応用先としてFAに目を付けた。ロボットや工場の監視制御システムと連携した高度な工場自動化を提案する。 リコーは光学技術を生かして無人搬送車(AGV)「M2」を16年から販売している。AGVの走路に磁気テープを必要としないのが大きな特徴だ。市販の黒色テープを使ってユーザー側が求める動線を作り、本体のカメラを通じて画像処理しながらテープ上を走行する。生産現場の自由なレイアウトとAGV投資におけるコスト削減を実現する。 日刊工業新聞2019年12月18日 自動運転技術の安全性をいかに評価して担保するか、世界で模索が続いている。現在有力なのは、現実的に起こりうる交通シーンやシナリオを書き出し、シミュレーターや実車で再現して検証するアプローチだ。日本だけでなく、ドイツ連邦経済エネルギー省(BMWi)の「PEGASUS(ペガサス)」プロジェクトにも採用された。安全性の評価技術はすべての基盤になる。日本は貢献できるか。 「日本はいま優位なポジションにいる。このままシミュレーターでイニシアチブをとりたい」と、内閣府の葛巻清吾戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動運転担当プログラムディレクター(PD)・トヨタ自動車先進技術開発カンパニーフェローは気を引き締める。SIPとして22カ国・地域の専門家を招き、自動運転の法整備や開発要素について協議した。安全性評価はまだどの国も模索中だ。多様な交通シーンで安全性を検証する必要があるものの、どれだけのケースを検証すれば十分なのか答えはまだない。 各国で共通するのは実際の交通環境から事故や交通シーンを集めて、シミュレーターやテストコースで再現して検証するプロセスだ。米バージニア工科大は事故手前のヒヤリハット事例のデータベースをもつ。運転映像や車速、加速度などのデータを元に危険シーンをシミュレーターやテストコースで再現する。同大のミシェル・チャイカディレクターは「ダイナミック(動的)なシナリオ検証が必要」と説明する。 ドイツBMWiのペガサスプロジェクトでも多様な交通シナリオを集めるデータベースが提案された。車両や事故のデータからシナリオを作りデータベース化し、実車などで検証する。葛巻PDは「求める安全性基準は国によって変わりうるが検証プロセスは協調する」と説明する。 具体的な評価ツールの整備も進む。各国で実環境に近いテストフィールドが整備された。中国は20以上の都市がテスト環境を提供し、完成車54ブランドが利用する。日本も東京臨海地域や高速道路をテストフィールドとして提供してきた。 そしてSIPとして評価シミュレーターを開発した。ビルでの電波反射など、シミュレーションの難しい要素を再現した。カメラはソニーセミコンダクタソリューションズ(神奈川県厚木市)と日立製作所、レーダーはデンソーと立命館大学、高機能センサー「LiDAR(ライダー)」はパイオニアが担当。 開発をまとめた神奈川工科大学の井上秀雄教授は「歩行者の認識性能など、より現実に即した評価ができる」と説明する。評価シミュレーターでは日本が一歩リードした形だ。葛巻PDは「評価法を押さえると製品開発も優位になる」と期待する。 そして安全性評価は国際共同事業に発展する可能性も出てきた。欧州委員会共同研究センターのファブリツィオ・ミナリーニ氏は「市販後も車からデータを集め、改善し続けることが重要。データや知見はグローバルにシェアすべきだ」と呼びかける。国際プロジェクトとして安全性に関わるデータを集め、各国の規制や標準化の調和を目指す。安全な自動運転社会の実現は各国の規制当局共通の思いだ。日本発のシミュレーターが貢献できるか注目される。(取材・小寺貴之) 日刊工業新聞2019年12月12日

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