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災害多発時代の企業経営「100年に一度ではなくもはや状態」

“ニューノーマル(新日常)”でサプライチェーンや勤務シフトを考える
災害多発時代の企業経営「100年に一度ではなくもはや状態」

水位が大幅に増す宇都宮市中心部の田川。親水性のある場所として知られているが、遊歩道にも水が…

 地震や台風による大雨被害、竜巻に火山噴火―。近年は50年―100年に一度と思われていた大規模な自然災害が多発している。企業はもはや、これを異常ではなく“ニューノーマル(新日常)”として対策を考える局面にある。

 台風18号の影響による9月初旬の大雨は、関東北部や東北地方の一部に大きな被害をもたらした。堤防の決壊や崖崩れなどで、死者や重軽傷者がでており、床上、床下浸水被害も多数だった。

 これにより生活者への影響ばかりでなく、企業活動も制約を受けた。高速道路の通行止めや崖崩れによる道路の寸断、工場浸水もあり、製造業などでは部品供給のサプライチェーンが滞ったという企業も少なくない。

 セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長は、こうした災害の多発を今後はイレギュラーな事態ではなく、常態化したとして考えた方がよいという趣旨の発言をしている。確かに、2011年の東日本大震災は1000年に一度の大地震と呼ばれた。13年には埼玉県越谷市などでこれまで例があまりなかった竜巻被害が発生。14年2月に関東甲信越地方を襲った記録的な大雪も、山梨県などで観測史上の最深積雪を塗り替えた。今回の大雨被害も含めて、最近の異常気象や災害は記録ずくめといえる。

 毎年のように発生する記録的な災害を、もはや「50年」「100年」という記号でとらえるのは適切ではない。大規模災害がいつ発生してもおかしくないというスタンスで、サプライチェーンを点検したり、勤務シフトを考えたりする経営が大事になる。

 ある中小企業経営者は「治山治水のあり方をいま一度、各自治体ベースで見直すべきではないか」と話す。確かに自然災害に対する備えを固めることは重要だろう。

 しかしどんな場合でも災害の発生自体は防ぎようがない。企業はまず、大雪や大雨による堤防決壊、地震被害による道路寸断などがあった場合の補完的なサプライチェーンの確保や、帰宅困難者対策という災害時の基本動作を、もう一度点検すべきだ。
日刊工業新聞2015年09月16日 「社説」
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
何十年に1度という災害が頻発している。“ニューノーマル(新日常)”に合わせた社会インフラに作り変えていかないといけないし、個人としても危機意識の感度を高めなくてはいけない。簡単なことではないのだが。

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