【全文掲載】孫さん激白!日本のAIは「自動運転とDNA」で米中に勝てる

17日の講演を再現

孫正義氏

ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は17日、世界の産学官の研究者が参加した「ムーンショット国際シンポジウム」(東京都中央区)で講演した。今後、人工知能(AI)を用いたあらゆるサービスが爆発的に増える中、米中を中心としたAI開発競争が本格化する。その中で、日本が存在感を示す戦略について「自動運転と、DNA解析による医療科学に焦点を当てたAI開発に注力するべきだ」と強調した。孫氏の講演内容を記載する。(取材・水嶋真人) 日本は1990年代前半、国内総生産(GDP)で世界トップの米国に肉薄した。しかし、現在は米中に大きく引き離された。かつて日米貿易摩擦が話題となったが、今や米中貿易摩擦だ。日本の存在感は薄くなった。そのことがとても悲しい。 この理由は何か。95年のインターネット普及を境に情報革命進んだことで、日本は成長エンジンを失ったことが最大の問題だ。私たちのムーンショット(実現すれば大きな変革をもたらす壮大な目標)は、米中のGDP抜くこと。これが達成できたらすごいことになるが、どのようにすれば達成できるかが大きな疑問に感じるだろう。私は解決策を持っている。 今後、米中によるAI開発競争が加熱する。(次世代通信規格の)第5世代通信(5G)は重要だが、ビッグデータ(大量データ)を即時分析するAIがないと5Gは生きない。だが、日本はAI関連特許数で米中に大きく離され、中国は米国を抜いた。このまま行けばAI開発競争でも日本は将来、負け戦になるかもしれない。すべてのAI関連分野で勝つのは無理なだけに、特定分野に焦点を当てて勝負しなければいけない。 日本が焦点を当てるAI関連技術は、自動運転と、DNA解析による医療科学だ。日本の65歳以上の高齢化率は29%と世界最高。高齢者による交通事故や医療費が増え続ける中、この2分野は日本の社会課題の解決にもつながる。この2分野で東南アジア、インドを含むAIデータバンクを作るべきだ。米国より地理的に近い日本が、インドネシア、インドなど強いAI基盤がまだない地域でAIデータバンクを作れば、米中より人口が多い地域をカバーできる。日本は良い立ち位置にいる。 すでに、(ソフトバンク・ビジョン・ファンド<SVF>が出資する米GMクルーズは)歩行者の横断や対向車、工事中による道路規制などをAIが認識した自動運転を実現している。もし、自動運転技術を疑っていたとしても、5-10年後には人間が運転するよりもで安全になる自動運転時代が到来する。 何十億ものアルファベットを分析して病気を見つけ出すDNA解析は、人間ではできない。でもAIならできる。(SVFが出資する)米ガーダントヘルスは、AIを用いた血液検査でDNAを解析し、がん細胞をいち早く発見できる。カリウスという企業は血液サンプルをAIで分析することにより、わずか1日で感染症などを見つけ出せる。従来は20回以上のテストを経て結果判明まで2週間かかっていた。AIでDNAを解析すれば、診断を素早く行え、生存率も高くなる。誤診も減り、薬も正しく処方できるようになる。ただ、日本では保険で、こうした技術をカバーできない。 米国には、すでにAIによる自動運転、DNA解析技術がある。しかし、米国の技術と戦うのではなく、協力すべきだ。日本人のDNAは米国人と違うし、アジア人に似ている。日本人はオリジナル技術の創出ではなく、既存技術の改良に強みを持つ。米国の技術をアジア向けに最適化し、東南アジアやインド市場を取り込むべきだ。 AI技術に秀でた世界の大学トップ10に日本の大学が入っていないことも問題だ。日本の学生は「これを勉強しなさい」と課題を与えないと勉強しない。だからAIをきちんと理解できる教育を義務化し、大学の入試科目にAIを入れるべきだ。これにより、日本の学生は必ず世界トップレベルに追いつくことができる。海外から優秀なAI科学者、教師を呼び、予算を掛けてビジネスモデルを作るべきだ。 予算も時間も人も限られる中、すべてを追いかけるのではなく、焦点を当てててほしい。今でも日本が世界トップレベルの技術を持つ自動車の自動運転と、DNA解析に焦点を当てれば米中に勝てる。

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