従業員7人の町工場、家族経営ならではの緊張感

杉本謄寿社長(右)は杉本安章前社長(左)から経営のバトンを引き継いだ

新生化学工業(兵庫県多可町)は、地場産業の播州織りで知られる兵庫県・北播磨地域に立地する。電気亜鉛メッキを手がけ、従業員は7人の町工場だ。杉本謄寿(のりひさ)社長は「規模の大きい企業が手の回らない少量多品種が強み」と胸を張る。1日に1社当たり最大80種類対応することもある。鉄部材にメッキを施して腐食を防ぎ、建設・農業機械、鉄道車両の部品など多業種に採用されている。 新生化学工業は1960年に創業し、80年に謄寿社長の父である杉本安章前社長が設立した。部材を脱脂し、塩酸に浸漬してメッキを施す。部材の種類や表面の状態に応じて浸漬時間を手作業で調整するなど、メッキの前処理にも独自技術を発揮している。 前社長が70歳を迎えた2019年7月、長男の謄寿社長が38歳で経営のバトンを引き継いだ。安章前社長は「たとえ失敗しても踏ん張り、新しい時代に合った考え方で会社を引っ張って行ってほしい」と背中を押す。 謄寿社長は大学卒業後、金融機関で5年間勤務した。「いずれは家業を引き継ぐことを意識していた」と振り返る。その後新生化学工業に入社。金融機関時代に営業を任せられ、多くの企業訪問で培った知見を現在の社内改善に生かしている。 メッキ現場は化学品を取り扱うため、常に汚れや危険と隣り合わせだ。作業環境の改善に加え、従来の“丼勘定”の考え方を変える必要があった。 これまで余分に部材を仕入れてメッキ処理していたが、顧客からの数量や品質管理要求が高度化した。「家族経営でも会社である以上、取引先も監査の目を光らせている」という。在庫や納期の管理、清掃や老朽化設備の改修など課題を洗い出した。 10月には兵庫県内の企業同士の情報交換やネットワーク形成を支援する「成長期待企業」に選定された。これを機に営業活動の強化やホームページの作成を通じた知名度向上に取り組む。 兵庫県中部を中心とした既存の取引先のほか、同県北部へも新規開拓を進める。謄寿社長自らトップセールスに汗を流す日々。少量多品種への対応力をさらに上げるため、現在活用している大型のバレルメッキ装置を今後3年間で小回りが利く小型装置に入れ替える計画だ。 謄寿社長は「主力取引先と充実した関係を築き、収益を安定させたい」と戦略を描く。小規模のメリットを生かして細やかな要求に応え、日本のモノづくりの発展を支える。(神戸・中野恵美子)

続きを読む

関連する記事はこちら

特集