何もない空中に触れる映像が浮かぶ…実用化近づく「鏡」の仕組み

連載・未来を創るテックプロダクト#01

SFのように空中に浮かぶ映像に触れる世界の実現が近づいている(写真はイメージ/パリティ・イノベーションズ提供)

タンポポの映像が何もない空中に浮かぶ。綿毛に触れるとふわふわと飛んだ―。パリティ・イノベーションズ(京都府精華町)が開発した特殊なミラー「パリティミラー」を使って実現した映像だ。メガネ型ウエアラブル端末など特殊な道具を装着せずに空中映像が見られ、人の動きを捉えるセンサーと組み合わせると映像に触って操作できる。 すでに15cm角のサンプル品の提供を始めており、自動車や家電、エンターテインメント業界などが関心を寄せる。2020年初めには30cm角のサンプル品の提供を始める。販売促進ツールやトイレなどで手やスイッチが汚れない衛生的なユーザーインタフェース(UI)としての利用を見込む。SF映画で見られるような世界の実現が近づいている。(取材・葭本隆太) パリティミラーは樹脂製の板の表面に0.1―0.5mm角の微細なブロック状の鏡を数十万個秩序立て並べた構造を持つ。液晶ディスプレーなどの光源をミラーの下に置くと、面対称の位置にその映像が浮かぶ。ブロック状の鏡が映像を2度反射させ、光を空中の1点に集めて同じ大きさで結像させる。 この技術はパリティ・イノベーションズの前川聡代表取締役が情報通信研究機構(NICT)の研究員時代の05年に開発を始めた。当時は三次元(3D)映像を映し出すディスプレーの研究開発が盛んでその派生研究としてスタートしたという。 「たまたまホログラフィーの研究者と知り合ったことで映像を平行移動させて空中に浮かせるシーズ技術が開発できないかと考えました」(前川代表取締役)。 06年には特許を取得し、その後、協力企業により5cm角の製品を生産できる見通しが立ったため、10年にNICT発のベンチャーとして創業した。ただ、そこから量産体制を整えるまでが長かった。 「パリティミラーの製造にはレンズ並みの精度が求められるため、大型化が非常に困難でした。5cm角から10cm角にするまでに数年間かかり、正直ここまで苦労するとは思っていませんでした。(それでも研究開発を続け)実用化に向けた量産体制を整えるという意味では(約10年かけて)ようやく8―9合目に来ました」。 製品の普及には低価格も重要な要素だ。06年の開発当初は5cm角の製品で1枚数百万円だったが、成形技術の確立などにより低コスト化を進めてきた。15cm角のサンプル品は2万5000円程度を実現した。量産に向けて10cm角で1000円程度を目標にしている。 利用用途としては、空中映像は目を引くため、まずは販売促進ツールとして利用を見込む。またセンサーと連携して映像を操作できる仕組みにより、衛生的な非接触のスイッチとしての普及を期待する。具体的には、不特定多数の人が触るトイレや、手が汚れた状態で操作する工場設備や料理家電などでの活用が想定される。さらに将来は街中に仮想物体が浮かび、メガネ型端末などを使わずにAR(拡張現実)などが視覚され、多様な場面で現実そのものが拡張されていく世界を展望している。 「2025年には大阪・関西万博がある。(世界に発信できる)イベントの人が行き交う場所でそうした世界を実現したい」(前川代表取締役)。      

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